欧 米 の人名

海外の作品を読んでいて困るのは登場人物の名前が憶えにくいことです。姓名で出てきたと思うと、姓だけになったり、名前だけになったり、さらには断りもなく愛称が出てきます。ここでは、少しでも欧米人の名前に親しんで貰おうと考えました。叙述の都合でここでも英語名を中心にしています。

 


 

 

 

名前の由来

 アングロサクソンの命名法

   古代アングロサクソンの命名法は単純で、父親の名前と母親の名前を合成するものでした。これは日本でもよく見られる命名法ですね。
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 クリスチャン・ネーム

   キリスト教では洗礼の際に信徒としての名前(クリスチャン・ネーム)を付けます。このときに、 ジョン、デーヴィッド、ピーター、ポール、メアリー、エリザベス、ルースといった聖書起源の名前、ジョージ、パトリック、モニカ、バーバラといった聖人、聖女の名前がよく付けられました。その結果、このような名前が随分と増え、 欧米の名前の主流となりました。
 

聖書に由来する名前

アイザック

Isaac

アブラハムの子イサク

ダニエル

Daniel

裁判官ダニエル

アダム

Adam

最初の男アダム

デーヴィッド

David

イスラエル王ダビデ

イヴ

Eve

最初の女エバ

トーマス

Thomas

イエスの弟子トマス

エイブラハム

Abraham

最初の族長アブラハム

バーソロミュー

Barthormew

イエスの弟子バルトロマイ

エリザベス

Elizabeth

 

ピーター

Peter

イエスの弟子ペテロ

サイモン

Simon

イエスの弟子

フィリップ

Philip

イエスの弟子ピリポ

サミュエル

Samuel

預言者サムエル

ポール

Paul

布教者パウロ

サラ

Sarah

アブラハムの妻サラ

マイケル

Michael

大天使ミカエル

ジェイコブ

Jacob

イエスの弟子ヤコブ

マーク

Mark

福音記者マルコ

ジェイムズ

James

同上の変形

マーサ

Martha 初期の信徒マルタ

ジョーゼフ

Joseph

イエスの父ヨセフ

マシュー

Mathew

福音記者マタイ

ジョン

John

イエスの弟子ヨハネ

メアリー

Mary

イエスの母マリア

スティーヴン

Stephen

初期の教徒ステパノ

ルーク

Luke

福音記者ルカ
聖人・聖女の名前

キャサリン

Katherine

聖女カタリナ

バーバラ

Barbara

聖女バルバラ

ジョージ

George

聖人ゲオルギネス

マーガレット

Margaret

聖女マルガレタ

パトリック

Patrick

聖人パトリック

モニカ

Monica

聖女モニカ

 

 ギリシャ・ローマの残光

   ギリシャ・ローマ神話の神々や英雄の名前、実在した英雄や哲学者など偉人の名前もそう多くはありませんが使われました。 アレクサンダー、ジェイスン、ジュリアン、ジュリアなどがそうです。エルキュール・ポアロが、英雄ヘラクレスのフランス語形であるのは有名です。 また、聖人、聖女の名を通じてローマ人の名が流布しています。
 

アレクサンダー

Alexander

アレクサンドロス大王

ジュリア

Julia

シーザーの妹

アンソニー

Anthony

ローマ将軍アントニウス

ジュリアン

Julian

シーザー

エミリー

Emily

ローマのアエミリウス家

ダイアナ

Dianna

月の女神

オーガスタス

Augustus

初代ローマ皇帝

ヘレン

Helen

トロイ戦争の美女

ジェイスン

Jason

ギリシャの英雄イァーソン

 

 

 

 

 ノルマン系の蔓延

   1066年イギリスはノルマン人に征服されましたが、その結果ノルマン系の名前が多く付けられるようになりました。これ以後のイギリス国王に見られる、ウィリアムヘンリーリチャードエドワードなどがその代表です。
 

 名前の創作

   この方面ではシェイクスピアの功績が一番大きいようです。 オリヴィア(十二夜)、ジェシカ(ヴェニスの商人)、シルヴィア(ヴェローナの二紳士)、コーデリア(リア王)、ミランダ(テンペスト)などが挙げられます。
   また、ヴァージニアという女性名はアメリカで生まれたものです。
 

 流行の名前

爆発的にヒットした小説、演劇、映画の主人公、人気をさらった俳優、歌手の名前がその年に生まれた子供によくつけられます。アメリカではその時の大統領の名前をつけることも多いようです。 日本でもそういう傾向はありますね
 

 愛 称

欧米には会話の中で盛んに相手の名前を呼ぶ習慣があります。そのためか、親しい間では名前を短く、あるいは言いやすく変化させた愛称が使われます。ピップ(フィリップ)、ビル(ウィリアム)、ボブ(ロバート)など、元の名前からは想像のつかないものもあります。
 

名前→愛称

アルバート (Albert)

バート(Bert), バーティ(Bertie)

アルフレッド (Alfred)

アル(Al), フレッド(Fred)

ウィリアム (William)

ウィル(Will), ウィリー(Willy),  ビル(Bill), ビリー (Billy)

エリザベス (Elizabeth)

エリザ(Eliza), リズ(Liz), ベス(Beth), ベティ(Betty)

ケンウッド (Kenwood)

ケン(Ken)

コンスタンス (Constance)

コニー(Connie)

サラ (Sarah)

サリー(Sally)

シャーロット (Charlotte)

ジョン (John)

ジャック (Jack), ジョニー(Jonnie)

ステュアート (Stuart)

アート(Art), アーティ (Artie)

チャールズ (Charles)

チャーリー(Charlie)

トーマス (Thomas)

トム(Tom), トミー(Tommy)

ナサニエル (Nathaniel)

フィリップ (Philip)

フィル(Phil), フィリー(Philly), ピップ(Pip)

ヘンリー (Henry)

リチャード (Richard)

ディック(Dick)

ロバート (Robert)

ロブ(Rob), ボブ(Bob)

愛称→名前

アーチィ

Archie

Archibold

ニック

NIck Nickolas

ア-ティ

Artie

Arthur, Stuart

バート

Bart Albert

アル

Al

Alfonse, Alfred ピップ Pip Philip

ウィル

Will

William ビリー Billy William

エイブ

Abe

Abraham ビル Bill William

エリザ

Eliza

Elizabeth フレッド Fred Alfred

ケン

Ken Kenwood ベス Beth Elisabeth

コニー

Connie Constance ベティ Betty Elizabeth

サム

Sam Samuel ベン Bob Robert

サリー

Sally Sarah ボブ Bob Robert

ジャック

Jack John

マイク

Mike Michael

ジョニー

Johnnie John

ミック

Mic Michael

スティーヴ

Steve Stephen

ミッキー

Mickey Michael

ダン

Dan Daniel

メグ

Meg Margaret

チャーリー

Charlie Charles

モリー

Molly Mary

トム

Tom Thomas

リズ

Liz Elizabeth

 

姓の由来

 親の名前

姓の無い時代に、誰々の子というように親の名前を冠するのが一番簡単です。イギリスには次のようなパターンがあります。
    S型             Jones, Peters, Williams
    SON型        Johnson, Peterson, Williamson
    Mc型(
スコットランド) McArthur, McDonald  (Mac- と綴ることもあります。)
    O'型(
アイルランド)     O'Hara, O'Niel,
イギリス以外では次のような例があります。
     Van (オランダ)   Ludwig Van Beethoven
     -sky (ロシア)      Romanovsky
     Ben (イスラエル) Ben Hur
  なお、ロシアの-vitchは本来呼びかけの慣用として"Ivan Ivanovitch"(イワンの子イワン)として用いたものですが、姓の無かった農奴に姓を付けるとき、これをそのまま姓にしてしまいました。 
 

 出身地の名前

   親の名前を聞いてもわからないような場合、素性を知るためには出身地がよく尋ねられます。例えば、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャは、ラ・マンチャ村の貴族(ドン)キホーテさんということです。 また、『バスカヴィル家の犬』のバスカヴィルは本来地名です。このような命名法は貴族に特有のことですが、ジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc)のような例外もあります。彼女は英語では Joan of Arc です。
   この場合には、出身地を表す前置詞を地名の前に付けます。
     イギリス (of)
     フランス (de or d')
     ドイツ    (von)
     スペイン (don)
 

 職  業

時代が下ってくると職業を姓に使うことが増えてきます。これは職業が世襲されているうちは便利だったでしょう。しかし、職業を変えるようになると先祖のルーツがわかる程度の意味しかありません。
 

アーチャー

Archer

弓作り、弓手

タナー

Tanner

革なめし職人

ヴィッカーズ

Vickers

司祭の召使

チャップマン

Chapman

行商人

ウィーバー

Weaver

織物職人

チャップリン

Chaplin

礼拝堂の牧師

ウェッブ

Webb

織物職人

チャンドラー

Chandler

蝋燭職人

ウェッブスター

Webster

織物職人

テイラー

Taylor

仕立て屋

ウォーカー

Walker

織物職人

パーカー

Parker

私有庭園の管理人

カーター

Carter

馬車職人、御者

バクスター

Baxter

女パン屋

ガードナー

Gardner

庭師

フィッシャー

Fisher

漁師

クーパー

Cooper

樽・桶の職人

フォークナー

Falkner

鷹(隼)匠

クラーク

Clark

下位の聖職者

フォスター

Forster

刃物職人

ケロッグ

Kellog

豚肉屋

ブッチャー

Butcher

肉屋

クック

Cook

料理人

フレッチャー

Fletcher

矢の仕上げ職人

ゴ-ルドスミス

Goldsmith

金細工師

ベイカー

Baker

パン屋

シェパード

Shepherd

羊飼い

ヘイワード

Hayward

垣根作り、垣根の番人

スペンサー

Spencer

食糧を分ける人

ポッター

Potter

陶器職人

スミス

Smith

鍛冶屋

マーシャル

Marshall

馬丁

タイラー

Tyler

タイル職人

ミルズ

Mills

粉屋

タッカー

Tucker

布地職人

メイスン

Mason

石工

 

 仇 名

その人の特徴を捉えて呼んでいたのが姓になってしまうことがあります。髪の色で、ブラウンとかレッドとか言われるのがその例です。

 

 

名前の雑学

 コロンブスとアメリカ Columbus and America

 

1492年コロンブスがアメリカ発見と年表に載っていますが、正確にはコロンブスが発見したのは西インド諸島で、大陸の発見者はアメリゴ・ベスプッチ。アメリゴからアメリカという名前がつきました。コロンブスの名は南米のコロンビアと、アメリカ合衆国のコロンビア州とコロンビア特別区に残るだけのようです。

 ジョン王 King John

 

失政を行って、家臣の反発を招き、遂にマグナ・カルタに署名した王様ですが、あまりにひどいと英王室では以後ジョンという名前は付けなくなったそうです。

 ジョン・スミス John Smith

 

日本で「山田太郎」にあたる名前ですが、「山田太郎」と同様、実際にはあまりないようです。と言いながら本当にジョン・スミス氏が出てくるのがアガサ・クリスティの「おしどり探偵」です。なお、ジョン・スミス氏で有名なのはポカホンタスに助けられ恋に落ちる人物ですが、名前が名前なので虚構だと見る人が多いようです。

 ジョン・ドウとリチャード・ロウ John Doe & Richard Roe

 

法律文書で匿名にする場合は、ジョン・ドウとリチャード・ロウを使います。

 ハポン Japon

 

伊達政宗は家臣の支倉常長をイスパニアに派遣しましたが、その一行の子孫がいまもスペインに残っており、日本(Japon)を姓にしているそうです。

 フランケンシュタイン Frankenstein

 

一般にフランケンシュタインというと人造人間の代名詞みたいになっていますが、実はフランケンシュタインは人造人間を造った医学博士の名前です。人造人間のほうには名前がありません。

 ベートーベンは貴族か

 

ベートーベンは正しくはヴァン・べートーベンと言い、このヴァン(Van)はオランダで「・・・の子」という意味です。ところが、ドイツ語圏のフォン(von)は同じ意味ですが貴族にしか付きません。甥の後見を巡る訴訟で、この二つが混同され、ベートーベンは貴族だと誤解され事件は貴族裁判所へ回されました。この裁判所は貴族に甘いからベートーベンは勝訴しましたが、「あいつは貴族じゃない」ともう一度訴えられ、平民の裁判所では負けてしまいました。

 ピエロ

 

イタリアで発生した喜劇、コメディア・デラルテの登場人物で、コロンビーヌに惚れていますが、コロンビーヌにはアルレッキーノ(ハーレクィン)という恋人がいて、いつも辛い目に遭います。それで顔に涙を描いているのです。なお、サーカスの道化師はクラウンという別起源のものですが、いつの間にかピエロと混同されています。

 ルパンかロパンか Lupin or Lopin

 

アルセーヌ・ルパンは最初はロパンという性でしたが、同姓同名の政治家がいて、いくら何でも盗賊と一緒ではと抗議したので、ルパンに改まりました。

 レイジー・スーザン Lazy Susan

 

中華料理店によくある、テーブルの上の回転式小テーブル。これと同じような方式と用途の回転台(大小あります)を英語ではレイジー・スーザン(怠け者のスーザン)と言います。

 ワシントン Washington

 

ワシントンはイギリスにある地名で、それが姓として使われ、ジョージ・ワシントンがアメリカ合衆国初代大統領になったため、ワシントンという地名ができました。なお、これを名に使ったワシントン・アービングも、彼を記念するアービントンという町ができましたが、無情な行政のため彼の家はそこから外れてしまいました。