
wonderふるstream
ここでは友人・知人の作品を随時ご紹介していきます。
友人はともかく、知人というのは便利な言葉で、あちらはどうか知らないが、こちらは知ってる
というケースも、ままあるやも知れません。それでもその方の作品を激賞とまではいかなくとも、
少なくとも「ご紹介」するわけですから、まぁ許されるんじゃないでしょうか?(since
2004.9.18)
第二十四回 2011年8月7日(日)

『戦争へ、文学へ』
「その後」の戦争小説論
陣野 俊史著 定価:本体2,200円+税 ISBN: 978-4-08-771409-8
出版社:株式会社集英社 発行日:2011年6月10日
【目次】
序 「新しい戦争」と新しい「戦争小説」
第一部 湾岸戦争・「9・11」・イラク空爆
第一章 戦場としての渋谷
第二章 画面の中の戦争
第三章 「9・11」と砂漠
第四章 戦争の匂い
第五章 古井由吉「この日警報を聞かず」をめぐって
第六章 複数にして単数であること
第七章 湾岸戦争といとうせいこう
第二部 戦後生まれ作家による太平洋戦争
第一章 鼠になるということ
第二章 たった一人の戦い
第三部 原爆体験と引揚者の「その後」
第一章 ポスト原爆小説
第二章 小説の市民権と死の共同体
第三章 「引揚者の小説」を遠く離れて
第四章 歓待について
終わりに
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★★
○以前、第九回(2005.5.3)で『龍以後の世界』をご紹介したことのある大学の後輩、陣野俊史さんの最近の著書。
朝日新聞はじめ多くの書評で取り上げられていたようでしたので、久々に文芸評論にチャレンジしてみました。
いや、まぁ、最近彼が私の呟きを見つけてくれて、Twitterを相互フォローするようになったことも大きいかな?
○で、この本。とってもオススメです!
この前会ったAkiから「純文学とかもう読んどらんやろ?」と言われて「いや、そんなこともないよ」と答えていましたが、
陣野くんのこの本で紹介されている作品の中で読んでいたのは、せいぜいいとうせいこうの『ノーライフキング(1988年)』や
『ワールズ・エンド・ガーデン(1991年)』。阿部和重の『インディヴィジュアル・プロジェクション(1997年)』。
星野智幸『毒身温泉(2002年)』といったあたりまでで、古処誠二や青来有一といった作家は正直名前すら知りませんでした。
○でも著者が「終わりに」でも書いているように、「あらすじ」を紹介しながらの解読・批評が行われているので、
私のようにその作品を未読の者であっても、充分ついていける内容になっています。これがオススメする第一のポイント!
○ふたつめのオススメ理由は、そうですねぇ…戦争と文学について、「新しい戦争」と新しい「戦争文学」というキーワードから
読み解いていくのですが、戦争というものの不可避と偏在性について語りながらも、改めて<文学>というものの存在意義が
何となく垣間見えたことです。
第二部で紹介されている奥泉光と古処誠二の作品の質の高さには瞠目すべきものがあると感じました。
○みっつめは、第三部の展開。
長崎出身の陣野くんと大連からの引揚者を母に持つ私との接点みたいなものを再確認できたこと。
これは彼と私の間だけの問題かも知れませんが、「九州もんばい」と呟いてみたりもした。小学校の時の修学旅行は、
長崎・雲仙1泊2日。平和祈念像の前で記念写真を撮られたりしたものです。
第二十三回 2011年1月29日(土)

医療と福祉を超えて暮らしを拓く
『住民力で地域医療』
―医師・宮原伸二の軌跡―
最所 久美子著 定価:本体3,200円+税 ISBN: 978-4-623-05807-5
出版社:ミネルヴァ書房 発行日:2010年8月20日
【目次】
プロローグ
第1章 農村医への道
第2章 先進的地域医療を目指して
第3章 本物の医療と福祉づくり
第4章 村づくり方式を街に
第5章 支え合う医療福祉文化を
エピローグ
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★★
○初めてご紹介する「最所 久美子」さん。編集者兼ライターとして神戸をベースにご活躍されてる方で、
20年近く前にとあるイベントのお仕事でお世話になって以来、ポツポツお付き合いさせていただいております。
今回こういったご本を上梓されたことを伺いだいぶ以前に手にしていたのですが、随分<積ん読>にしてしまいました。
○ところが読み進むうちに、ここで取り上げられている<老いと死>の問題の大きさとそのことに対する国家としての
あまりの混乱と無策ぶりにただの<危機感>では治まらない<恐怖>のようなものに背を押され、
読み始めてからは逆に一気に読み終えた、というのが正直なところです。
○それにしてもこの宮原伸二という方の進んでこられた<道>のなんと素晴らしいことでしょう!
若くして無医村地区などへの「地域医療」の必要性に目覚め自らにそのミッションを課して以降、
躊躇うことも怯むこともなくひたすら前へと突き進んできたそのエネルギーと無私のこころに打たれます。
○秋田県上郷での『上郷健康センター』で試行錯誤で作り上げた押しつけではなく、あくまでも自発的な<住民力>で
人々の健康を増進させていこうとする考え方を、次の高知県西土佐村の『西土佐村健康センター』にも生かし……
といった詳細は本文に譲るとして、この間に彼が患者たちから学んできたと仰ることはとても貴重で尊い。
○もちろんそのように<患者から学ぶ>ことのできる医者もそう多くはないのが実情なのだろうと思う。
それができるにはやはり持って生まれた<感性>や、患者への<愛>。そして医療とか福祉といった仕事に従事することへの
<誇りと使命感>があってのことなのだろうと思う。
○「名医」より「良医」。医療と福祉の包括的融合。看護と介護の壁の撤廃。そして必要なのは「キュア」ではなく「ケア」、
住民自身が健康への意識を高め、健康管理に自ら自覚的になることの大切さ……等々。
○日本における2009年現在の高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口比率)は22.8%。
2018年にはそれが28.6%になると予測されている今、
もはや「ピンピンコロリ(PPK)」といった平和な死に方はできないのだ!(P213)という冷厳な事実は重い。
これからはどんなに健康に留意しても、人は「誰でもみんな障害者になって、介護されながら死んでいく」ことになる現実に
向き合っていかなければならないということを肝に銘じて、社会としてまたは社会人(住民)として、どのようにお互いを
支え合っていけるかを真剣に考えないといけないと感じました。
第二十二回 2010年3月28日(日)

『岩崎弥太郎「三菱」の企業論』
ニッポン株式会社の原点
中野 明著 定価:本体1700円+税 ISBN: 978-4-02-330497-0
出版社:朝日新聞出版 発行日:2010年3月30日
【目次】
第1章 ニッポン株式会社の胎動
第2章 株式会社を目指す海援隊
第3章 岩崎弥太郎の下積み時代
第4章 渋沢栄一のフランス修業
第5章 合本主義と道徳経済合一論
第6章 三菱商会と専制独占主義
第7章 海運をめぐるチキンゲーム
第8章 資本の論理と資本の倫理
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★☆
○お馴染「中野明」さんの最新作を献本戴きましたので、久々のご紹介です。
いや、彼からはもう何冊も贈って戴いていますので、久々なのは彼が、ではなく私がサボっていたからなんですが…。
○時節柄きっと売れますよ!と思いますが、売れる売れないではなく、
近作『日本人の経営魂――時代の断絶と闘ったサムライたち』(学研パブリッシング)から派生して生まれた姉妹本のような
印象のあるこの本でも、丹念に資料を読みこみながらも自分なりの考え方をきちっと整理して、わかりやすく話を進めていく
この著者の誠実な仕事ぶりが光っている好著だと思います。
○幕末の激動期に<会社の種>を蒔いたと評する小栗忠順や海援隊で有名な坂本龍馬の足跡を一通り辿った後、
いよいよ明治期の二大巨頭渋沢栄一と岩崎弥太郎の活躍と奮闘ぶりが描かれるわけですが、両者の選んだ道は、
まったく対照的だったと言っても過言ではないものであり、しかしながら最終的にはこのどちらの存在も必要だっただろうと
結論づける著者の判断の詳細については本作をひもといて戴くとして、そのふたりを見詰める眼差しは大人の目線である。
それはやさしくも沈着である。単に時代が下ったための結果論として分析を進める冷徹な意味合いのものとしてではなく、
一部『坂の上の雲』にも相通じる国造りに必死に取り組んでいた当時の挑戦者たちへの称賛の気持ちがベースに敷かれているから、
なんだと思います。
○最終章で、この本で採り上げた人物たちの立ち位置を「会社設立の流儀」と「会社運営の主義」の観点から
@西洋輸入×合本分配A西洋輸入×専制独占B日本独自×合本分配C日本独自×専制独占
という4つの象限に分けてマトリックスでわかりやすく提示するところなどは、さすが広告プランナー出身だけのことはある、
と妙に感心させられました。
第二十一回 2007年9月17日(月)
『星新一』
一〇〇一話をつくった人
最相 葉月著 定価:本体2300円+税 ISBN: 978-4-10-459802-1
出版社:株式会社新潮社 発行日:2007年3月30日
【目次】
序章 帽子
第一章 パッカードと骸骨
第二章 溶けた鉄 澄んだ空
第三章 解放の時代
第四章 空白の六年間
第五章 円盤と宝石
第六章 ボッコちゃん
第七章 バイロン卿の夢
第八章 思索販売業
第九章 あのころの未来
第十章 頭の大きなロボット
第十一章 カウントダウン一〇〇一編
第十二章 東京に原爆を!
終章 鍵
あとがき
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○「最相葉月」さんの本をここで採り上げるのは2回目です。前回『あのころの未来 星新一の預言』以来、またしても<星新一>ということになるのですが、実は少し困惑しています。その困惑について少し解説してみますと、先ずはあまりにも読むことにエネルギーを必要とする大作になってしまったこと……。つまり読者に対してはあまり親切ではない、ある意味作者の側が大いなるエネルギーを費やして、絞り込んで絞り込んで作品化した星の<ショート・ショート>と対極にあるものではないのか?と。
○またそれを読まされる(!?)読者にとって、彼女がこの作品をこのような大作に仕上げてしまう―その大いなる労力の動機となる<理由>が何なのかが今ひとつ読み取れない。そこにちょっと突き放されたような寂寥感を覚えるのである。
○Amazonのカスタマーレビューで「Here is Eden」という方がいみじくもこういった投稿をされていました。
最相葉月という人は、
相当な自己プロデュースの力を持つ人だ。
もちろんノンフィクション作家としての技量も
この世代の書き手の中では突出していると思う。
しかし、それゆえに、いつも、
その作品は「切実さ」とは程遠い。
「熱」の不在といってもいいのかも知れない。
この人はなぜ「この作品」を書くのか、
そのぎりぎりの核のところに、
空虚を感じてしまうのは私だけだろうか。
(引用終わり)
○正直私自身、ちょっとこの方と同じような感想を抱いてしまいました。
前回の作品評価で私もこのように書きました。『「最相葉月」の良さは、ひとつはその<着眼点の鋭さ>。そしてそれを解明していく<緻密な取材力>。最後に、その膨大な資料に音を上げることなく、破綻のないきちっとした一作品に仕上げていく<構想力と構成力>。』
この点は今回の作品でも同様で大いに再評価してしかるべしなんだけども、ちょっと釈然としないものが残りました。
「なぜ「この作品」を書くのか」という点では、愛読した作家=星新一へのオマージュだとか、彼が結局ものすることのできなかった星一(星製薬の創業者であり新一の実父)の人物伝を残したい、新一自身の手による『人民は弱し 官吏は強し』では書ききれなかった実像に迫りたいという想いだったのだ…といった解釈が成り立ちますが、それが作者自身の本当の想いなのだろうか?と、ちょっと訝しく思います。
○確かに600頁にも及ぼうかという大作。膨大な資料を丹念に緻密に解きほぐしていく手法によって、<家>というものの重さを描いた北杜夫の『楡家の人々』をちょっと想起させるようなところもありましたが、資料と取材だけではどうしても想像と解釈に走り過ぎるところがあったのではないかと思われます。
○また、星の創作の本質に迫って欲しかった例えば<私>のような読者には、その前後あるいは周辺の話ばかりが集められたように感じました。星の創作態度は密室の中のブラックボックスのに収められたままだったように感じました。膨大な創作メモのこと、締め切りはいつもきっちり守っていたこと……。<質>を守りながらもいつしか一〇〇一話という<量>にこだわりだしたこと。そのあたりの<質>と<量>の問題にもっと迫ってほしかったですね。
○この夏、亡くなった作詞家阿久悠は、数々のヒット曲を残しましたが、ナント彼は実に5000曲もの歌詞を書いたそうです。ショート・ショートとはいえ、小説と歌謡曲の歌詞ではまた比較するのが間違っているのかも知れませんが、気になるところです。
第二十回 2007年6月17日(日)
『食い逃げされてもバイトは雇うな』
禁じられた数字<上>
山田 真哉著 定価:本体700円+税 ISBN: 978-4-334-03400-9 光文社新書
出版社:株式会社光文社 発行日:2007年4月20日
【目次】
はじめに 数字は、99%の意識と1%の知識
イントロダクション 「Web2.0」『ゲド戦記』がすごい本当の理由
―数字のルールはたったの4つ
第1章 今日は渋谷で6時53分
―数字がうまくなるための技法
第2章 タウリン1000ミリグラムは1グラム
―ビジネスの数字がうまくなる
第3章 食い逃げされてもバイトは雇うな
―会計の数字がうまくなる
第4章 決算書の見方はトランプと同じ
―決算書の数字がうまくなる
「あとがき 」というか「なかがき」というか解説
ミニミニ会計セミナー
索引
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★★
○これはおよそ2年前、第十二回<2005年7月2日(土)>でご紹介した『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の山田 真哉さんの最近作ですが、これもまた文句なしに面白い! いやいや社会や世の中を見る独特の視点の鋭さ・ユニークさは一向に衰えませんな、感心しきりです。
○元々、文系だった著者が社会人になって5月病にかかった結果、会社を辞めて公認会計士の試験を受けることになった著者のエピソード。いやいや簿記の勉強をしながらある日、はっと気づいたのは「数字ばかりだと思ってたけれど、半分は文字で書かれているじゃないか!」(P20)ということだった……。「ということは、「会計の半分は文字でできている」のです。/このことに気づいた瞬間から、私にとって数字は、数を示してくれる言葉にすぎなくなりました」(P22)というのです。なるほど!
○この気づきから次には、いかに数字が<雄弁な言葉>なのかについて、実例を挙げ、<数字の4つのルール>*を紹介しながら見事に解説していくその手腕にはホント惚れ惚れしますね―「Web2.0」やゲド戦記の「宮崎吾朗 第一回監督作品」という宣伝コピーの例について、それがいかにスゴイ!のかについて、縷々説明する山田真哉氏には、「いや、このネーミングやコピーワークも素晴らしいけど、それに気づいてこれだけ見事に解説できるアンタもやっぱすごいよ」って声をかけたくなります。
○「本のタイトルに数字が使われる理由」(P50)の引用例もとてもわかりやすい!
光文社新書シリーズからの例でも、一目瞭然。
『若者はなぜ3年で辞めるのか?』 vs 『若者はなぜすぐに辞めるのか?』 → 決めつけ<言い切ってしまう説得力>
『99.9%は仮説』 vs 『ほとんどが仮説』
→ 常識破り<裏切ることでインパクト>
『江戸三〇〇藩 最後の藩主』 vs 『江戸の最後の藩主』
→ ざっくり<わかりやすく理解しやすい>
どう見ても数字が入ったものの方が強いですよね。フウー。
○後半はクイズ形式でお話が進んでいくのですが、表題の「食い逃げされてもバイトは雇うな」こそ、結論がある程度予想できると思いますが、その他の問題でも、いかに数字をうまく使えばいろんなことが見えてくることを鮮やかに紹介してくれます。騙されたと思って是非! <下>っていつ出るのかなぁ?
*<数字の4つのルール>
1. 数字には「順序がある」
2. 数字は「単位で意味を固定する」
3. 数字は「価値を表現できる」
4. 数字は「変化しない」
第十九回 2007年4月22日(日)
『江田島海軍兵学校 究極の人間教育』
徳川 宗英著 定価:本体1600円+税
ISBN: 4-06-213722-4
出版社:講談社 発行日:2006年12月12日
はじめに―人間教育とリーダーの理想の姿
序 章 最後の生徒
第一章 海軍教育の真髄
第二章 士官である前に紳士たれ
第三章 ジェントルマンシップと武士道
第四章 アメリカ海軍のエリート養成術
第五章 江田島の極意
第六章 失敗から何を学ぶか
第七章 いまも生きる江田島の教え
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○この本は実は昨年の年末に新聞広告で見つけ、著者と同じ第77期:最後の兵学校生徒であった父のためにお正月のお年玉的にアマゾンから贈ったものです。それを私も借りて読ませていただいたものなのですが、帯にもありますように、“人間教育”という視点からは、なかなか多くの示唆に富む素晴らしい内容だったと思います。
○著書では当然のことながら日本海軍の成り立ちや海軍兵学校の設立に至る経緯や、士官のマナー集『礼法集成』の紹介、他国であるアメリカ海軍のエリート養成の指針なども数多く紹介されていて、ご紹介しだすとそれこそきりがないのですが、私が一番印象に残ったのは、“トイレのマナー”についてのエピソードでした。「士官である前に紳士たれ」の真骨頂だと感じました。
「ズボンのボタンはその場でしめろ。昇汞水(しょうこうすい:殺菌消毒に使われた塩化水銀の水溶液)で手を洗え。手も、その場でぬぐうのだ。歩きながらボタンをしめたり手をぬぐったりするな」(P183)
ここまで細かく指示があることにまず驚きますが、実際今でも会社などで「歩きながらボタンをしめたり手をぬぐったりする」人って結構いません? いやもっと言うと手を洗わない輩も結構目にします。私自身今まで、ハンカチで手を拭きながらトイレを出ようとすることは結構あったので、最近ではその度にこの一節を思い出し、自制するようにしています。
○また「自分のことは自分でやれ」という教育が徹底しており、徳川氏は、服のボタンつけや小さなほころびを直すことなどは、今でも自分でできる(P179)と書かれています。素晴らしい!
○勉学―という観点でも驚かされる事実がありました。
「貸与品のなかで、もっとも印象に残っているのは、青い表紙の研究社の英英辞典です。これは第一章でも述べたように、語学教育を重視した井上成美校長の英断によって、兵学校の生徒一人ひとりに貸し与えられるようになった」「当時の海軍が用意した英英辞典は、ざっと一万冊にはなったでしょう。物資が欠乏しきっていたあの時代に、よくそれだけの数を集められたものだと思います。」(P167)
○「五省」については、昔父がよく話していたのを想い出しました。
ご存知でない方のために、ちょっと長くなりますが引用させていただきます。
「江田島の一日をしめくくるのは、「五省」の暗誦でした。(略)
一、至誠に悖(もと)るなかりしか
一、言行に恥ずるなかりしか
一、気力に欠くるなかりしか
一、努力に憾(うら)みなかりしか
一、不精に亘るなかりしか
これらをいまの言葉でいえば、次のようになるでしょう。
一、不誠実な行動はなかったか
一、言動に恥ずべき点はなかったか
一、気力に欠けるところはなかったか
一、悔いを残さないよう、諦めずに努力をしたか
一、不精をせず、最後までものごとに取り組んだか 」 (P186〜187)
○お約束の著者と私との関係は、冒頭でご紹介しましたようにだいぶ遠いのですが、<父の海軍兵学校の同期の方>という点だけです。
私自身は結構関心をもって読めましたし、折角プレゼントさせてもらったのに父の読後感は思いの外不評で、「この人は「江田島にはいい思い出しかない」(序章)とか言ってるけど、それはやっぱり違う…」「(田安徳川家の家系だったから)宮様のお相手とかで、特別扱いだったんじゃなかろうか…」といったことを呟いていました。著者も「鉄拳修正」のことには触れており、自分もビンタをはられたことを紹介されていますが、そんなもんじゃない…とでも言いたかったのでしょうか。
○一緒に写真に撮った本は、「江田島 イギリス人教師が見た海軍兵学校」(セシル・ブロック著 西山真雄訳) 銀河出版
徳川氏の著書にも何度も取り上げられているもので、たまたま弟が持っていたのでそれも借りてあわせて読んでみました。基本的には日本の軍事教練がどんな水準でどんな方法で行われているかを同胞に知らしめるために書かれたものだとは思いますが、全編に亘って「江田島」への尊敬の念と生徒たちへの愛情が感じられ、好感の持てるものだったと思います。国際協調というのもやはり、こうした人と人の接触、交歓の上に築いていきたいものだと考えさせられました。
著書の最後はこのような言葉で結ばれています。
「万が一にも、日本が白色人種の国々と交戦するようなことになったならば、われわれイギリス人教師が教えたことのある江田島の生徒が、ほんとうの江田島の理想、すなわち日本の武士道とイギリスの紳士の二つの理想の結合にしたがって国際問題を処理することを、心から希望してやまない」(P128 飯野氏訳)
P.S.
この本の中で、『礼法集成』→「第四編 一般礼式作法」→「第五節 談話」のご紹介があり、コミュニケーションを円滑にする十九ヶ条の要点が述べられていましたが、その中身がまたとても素晴らしいんです!(P94〜97)
国際人として生きていくうえで、今でも充分有効だと思われる会話のマナーが列記されていました。ここで引用続けさせていただくかどうかちょっと悩みましたが、あまりにも長くなってしまうので諦めました。ご興味がおありの方は是非原著にてご確認下さい。
【4/30(月)補記】
最近になって昭和天皇が靖国参拝をしなくなったのはA級戦犯が合祀されてからだという事実について、天皇の生の発言としてのメモが発見され世間を騒がせましたが、この著者も祀られていない側:徳川軍の末裔ということもあってか、靖国神社に対しては「合祀基準が公表されていない(P267)」ということで、微妙な立場をとっておられます。あまりにも首尾一貫していないその合祀基準について説明するため、主な合祀されている人、されていない人たちに関する言及があり、すこし興味深かったので、ここで引用・紹介させていただきます。(P264〜267参照)
〔合祀されている人たち〕
・明治維新の志士と戊辰戦争の官軍(維新政府軍)戦没者
・吉田松陰や坂本龍馬(賊軍との戦闘によって死んだわけではないが、「国事殉難者」として)
・沖縄戦で犠牲となった「ひめゆり部隊」の女子学生たち
・米潜水艦に撃沈され亡くなった疎開船「対馬丸」に乗っていた沖縄の子供たち
・東京裁判でA級戦犯となった人たち(絞首刑となった人や、裁判の途中で病死した人も含む)
・旧日本軍に召集されて戦死した韓国や台湾の人たち
〔合祀されていない人たち〕
・徳川軍や彰義隊、奥羽越列藩同盟に属した人々
・西南戦争に敗れ賊軍と位置づけられた西郷隆盛
・乃木希典(明治天皇の死去に際しての割腹自殺という「殉死」であって「戦死」ではないため)
・東京大空襲や広島・長崎の原爆で犠牲となった市民
第十八回 2006年10月22日(日)
チャン・キムとモボルニュの
『「ブルー・オーシャン戦略」がわかる本』
[ポケット図解]
競争のない未開拓市場を創る!
中野 明著 定価:本体600円+税 ISBN: 4-7980-1402-8
出版社:秀和システム 発行日:2006年8月6日
●『ブルー・オーシャン戦略』とは何か(ブルー・オーシャン解題)!
●レッド・オーシャンから脱け出す戦略!
●バリュー・イノベーションの実現!
●戦略キャンパスを使いこなす!
●分析ツールとフレームワークを知る!
●戦略策定とビジネス・モデルの構築!
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○昨日の朝日新聞の青「be」フロントランナーで、日本におけるSNSのトップランナー:ミクシィの笠原社長が紹介されていましたが、まさにこの<ミクシィ>の成功などが、「ブルー・オーシャン=豊穣なる新市場の発見」だったと言えるのでしょう。ただひとつこの記事で面白いと思ったのは、―「ミクシィ」立ち上げのきっかけは、03年の秋、いっしょに働いてくれていたインドネシア人の留学生(現取締役のバタラ・ケスマ氏)からSNSの存在を教えられたこと。―という点です。どうして他の日本人ではなかったのでしょうね。まぁ、その意味に気づいてからの笠原社長のスピーディな行動力、実行していく能力の高さには本当に驚かされますが。
○本書は、2004年に発表されてから世界中の注目を浴びているこの新しい理論を、そのエッセンスだけをうまく抽出して、その名の通り「図解」でわかりやすく解説された本です。恥ずかしながら、原典である『ブルー・オーシャン戦略』(ランダムハウス講談社刊)を未読のため、その理論がどれだけ正確に再現されたものであるのかについてはわかりませんが、大体こういうことを言おうとしている「理論」なのだ、ということはよくわかるものになっているのではないでしょうか。
○本書では、既存の競争原理から脱出して、いかに「豊穣なる新市場」を見つけていくか! その具体的な手法=方法論が見事に開陳されている。
キーワードはいくつかあり、市場空間の特徴を認識するための「戦略キャンパス」、市場の境界を引き直すアプローチである「6つのパス」。差別化と低コスト化を両立するための「4つのアクション」……などが代表的なものですが、中でも上がってきた複数の戦略キャンパスを比較検討する「戦略キャンパスの見本市」という考え方が秀逸だと感じました。しかもその評価・フィードバックはオープンで「公正なプロセス」のもとに実行されなければならない。その後「BOI(ブルー・オーシャン・アイデア)インデックス」と呼ぶツールで検証。「ティッピング・ポイント(臨界点)」を見定めながら、「4つのハードル」を乗り越えていく―。
○全体を駆け足で概説すると大体以上のようなことではあるのですが、この本の随所に鏤められている「コラム」がまたなかなかいい。
・ブルー・オーシャン戦略の用語の諸相(P20)
・ブルー・オーシャンは永久に続くわけではない(P34)
・バーティカル・マーケティングからラテラル・マーケティングへ(P56)
・マトリックスで考える(P74)
・トヨタ生産方式の価格設定(P88)
・ドラッカーのマーケティングとイノベーション(P104)
いずれもこの「ポケット図解」シリーズで、「トヨタ方式」、「ピーター・ドラッカー」、「エリヤフ・ゴールドラット」、「マイケル.E.ポーター」を次々となぎ倒してきた著者だけのことはある。「価格マイナス方式」が既にしてトヨタで採用されていた考え方であった点など、非常に印象的なエピソードでありました。
○著者はご存知、中野明氏です。相変わらずの健筆。多作ぶりには驚嘆させられます。今後ともより一層のご活躍を!
第十七回 2006年8月27日(日)


『外交敗北』
日朝首脳会談と日米同盟の真実
重村 智計著 定価:本体1600円(税別) ISBN: 4-06-213505-1
出版社:講談社 発行日:2006年6月29日
日本人よ、
外交の失敗を
看過できるか!
まえがき 拉致は「ファイナル・ボキャブラリー」だった
「ファイナル・ボキャブラリー」としての朝鮮問題
国会対策的手法が「外交敗北」をもたらした
第1章 米国は日朝首脳会談に反対であった
第2章 外交放棄のミスターXとの交渉
第3章 日朝首脳会談の真実
第4章 平壌とワシントンからの証言
第5章 外交敗北
終 章 日米同盟の再建
あとがき 北朝鮮情報の読み方
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○自民党総裁選が目前です。下馬評では「安部晋三」氏が抜きん出ているとのことですが、さぁ、どうなるんでしょう。
この安部ちゃん人気の発端はこれだったのではないですかね? <朝鮮問題>。TVでおなじみの「重さん」ですが、さすが、この問題については詳しいですね。あ、そうなんだ。そうなんだ、と感心しながら読み進むうちに、あっという間に読了してしまいました。
○2006年8月現在、完全に膠着状態に陥っている<日朝関係>、<日本人拉致問題>について、結論から言うと、当時の日朝双方の《外交敗退》の結果なのだ、ということなのである。裏表紙の写真を載せたのは、この世紀の大失態の先方のキーマン:ミスターXが写っているからです。一番右端で会談に同席するため、まさに着席しようとしているところ。当方の問題児は、当時日朝首脳会談の立役者とされたアジア大洋州局長:田中均である。彼らの間の<個人外交>にすがって、日朝双方それなりの収穫に手を打って、互いの手柄としようとしたところに問題がある。
『日朝首脳会談後に、北朝鮮は過去になかったほどの「外交敗北」を喫したことを、悟った。二回の首脳会談に応じながら、得たものは十二万五千トンの食糧支援だけであった。拉致を認め、拉致被害者を帰国させてしまった。日本にウソをつき続けた北朝鮮が、初めて「日本のウソ」に乗せられる結果に終わったのである。』(P130)
『アジア大洋州局長は、五人を北朝鮮に戻すよう主張した。五人の人生よりも、Xとの個人関係を重視したのである。国民の命を救出する「外交」よりも、北朝鮮有力者との「国会対策的関係」を選んだのである。』(P156)
『「局長、あなたがやっているのは外交ではない。北朝鮮へのお願いだ。外交官なら、お願いをやめて外交をやりなさい」
この中山参与の言葉こそが、北朝鮮に対し日本が、「外交敗北」を続けた本当の理由であった。』(P157)
○アジア大洋州局長の名誉のために少し補足しておくと、この<敗北>はひとり田中均氏のみの責にあらず、1990年の金丸訪朝団。1997年の森訪朝団。1999年の村山訪朝団ら歴代の政治家達も同罪だというのである。こと北朝鮮問題に関わり、それでいて北朝鮮利権にまったく関係なかったのは、小泉さん、安部さんと高村元外相くらいだ、というのである。
『現代における「国益」とは、「国家の利益」ではなく「国民の利益」である。』(P103)とはけだし名言。国民のひとりとして忘れてはならない《わたしたち国民が国家に守らせるべき大事な約束》であると感じた。
○この本には、<まえがき>にある<ファイナル・ボキャブラリー=ある時代のある社会、あるいは個人にとって、絶対に変えられないと思う言葉と解釈のこと>という重要なキーワードが開陳されているほか、<外交とは「理解可能性」を高める作業>とか、<外交官は「ウソをつかない」ことが、原則である>とか、外交に通じた著者ならではの箴言に満ちている。
かのアジア大洋州局長については、記者の間でも、「ウソをつく人」として悪評紛々たるものがあったようです。
○ただ、基本的には米国寄りの主張を展開する著者ではありますが、小泉さんの<靖国問題>については外交バランスの悪さを指摘している。日中・日韓の<ファイナル・ボキャブラリー>に抵触するからだ―というのである。ただ、一方では米国との関係性の重要性を語る著者ではありますが、その彼にして靖国神社内の「遊就館」など、この施設の本性が米国に知れたら大問題ではないの? 本当は<反米>を表しているのではないかという問題施設についての論議はありませんでした。あくまでも<北朝鮮問題専門家>という範疇でのお話に留められたのかな?と思いました。
ただ、少なくとも<北朝鮮問題>に関しては、小泉さん、安部さんの対応は素晴らしく従来的でなく、日朝関係のこれからを模索するものであった、と高く評価できるものであったいうことは言えるようです。(対中、対韓の姿勢としては、私個人は必ずしも評価していませんが)。
○さて、著者と私の関係ですが、当サイトでご存知、お馴染みの「爺さつまくん」の従兄弟でいらっしゃる、というところです。
先日も神戸での氏の講演が催された際にお会いになられたそうです。重村 智計さんはとっても有名なお方ですので、それをして知人に入れてしまうのはちょっと強引で失礼なことかも知れませんが、どうかご容赦願います。こういった政治問題は結構意見がわかれるので、採り上げることに若干躊躇しましたが、なかなか平易でわかりやすい良書だと思いましたので、ご紹介させていただきました。激論のお申し出とかは、一切お断りいたしますので、悪しからず。
第十六回 2006年7月8日(土)
『こんな働き方があったのか!』
就職情報研究所編 定価:本体1500円+税 ISBN: 4-7571-2177-6
出版社:NTT出版 発行日:2006年6月2日
働き方維新!
就「社」から就「職」へ
ある人材派遣会社の挑戦が日本の雇用を変えていく
新たな「職」のあり方を求める全ての人に――
序 章 ゆらぐ新卒就職
第1章 こんな派遣会社があったのです
第2章 さまざまな大手企業でキャリアを磨ける仕組み
第3章 学びたい意欲に応える会社の課外活動
第4章 若い契約社員が会社の運営・経営に参画!
第5章 「5年後」のその先に、何をめざすのか
第6章 若い世代の意識改革はここまで進んでいる
第7章 会社依存でもドライでもない、会社と社員の新しい関係
終 章 働き方維新
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○なんかたまたま、「NTT出版」が続きます。昔は「NTT出版」というと<FFシリーズの攻略本>というイメージが強かったのだけれど、最近はこういう<会社紹介シリーズ>みたいな出版形態のものにも積極的だ、ということなのでしょうか。
今回は「就職情報研究所」さん。第八回でご紹介した北薗修身さんと同じパターンで、「まえがき」で名前が出ているライターNさんが取材と原稿執筆を担当しています
。
○この本は、「旭化成アミダス」という人材派遣会社の<IT新卒特定派遣>というちょっと変わった試みについて採り上げ、数多くの関係者の証言を取材しながら、その実態を詳しく紹介していってる―というものです。「まえがき」の冒頭にもあるように、正直「こんな働き方があったのか!」というより、「こんな会社があったのか!」って感じました。
いや、世の中では“人材派遣業”なるものが著しく伸びていて活況を呈していることは新聞報道等でも多く取り上げられているし、実際私の勤める会社でも何社もの派遣会社から数多くの<派遣社員>が送り込まれていているので、おおよその様子はわかっていたつもりでしたが、そうですか。世の中はここまで進んで(?)いたのですねぇ………。
昨年あたり、総務の担当者から、プロモーション部門の私に人材派遣会社の紹介があり、キャンペーンの事務局員などで使えませんか? とか、事務局ごとアウトソーシングすることもできますよ的な売込みがあり、その時はいろいろ理由を述べて丁重にお断りしたものでしたが、本当に厳しい時代が始まっているのですね。
そう言えばわが社にも、PC関連の保守・点検のためだけの人材が派遣社員として常駐なさっていますが、これも似たようなケースだったのかしらん?
○世に言う<失われた10年>を経て、都銀の数はあっという間に半分以下になり、TOYOTAを除く大手メーカーの浮沈も目まぐるしい今日この頃。この会社なら『絶対』安心ということは誰も言えない。2002年入社の若い女子社員がこう言い放つ。
「いまの時代はどの会社に入っても『絶対』という保障はないでしょう。それなら危機感を持って、自分がどこでも通用する力をつけることのできる会社を選ぶ方がよいと考えました」(P149)
とにかくこの本に見られるように一部の前向きで意識の高い若い層では、こうした考え方が完全に根付いているのでしょう。
従って『社員たちが会社に求めるのは「安定した生活と仕事」ではなく、「短期間でどれだけ自分の成長できる場があるか」ということなのだ。だから、原則5年間の有期雇用であることも、「5年間しかないという緊迫感があり、怠けそうな自分の戒めになっている」』(P151)というところまで<職業というものへの意識>が変わってきている―ということなのだ。とにかくここに登場する若者たちは、本当に真面目で働くことへのモチベーションが高く、ちょっと草臥れたオッサンにはホント、頭の下がる思いがする。
○この会社がユニークでかつ若い社員のひとりひとりが輝いているのも、終章で旭化成アミダスの佐藤社長が紹介しているように、それはやはり、経営の考え方に「ゲゼルシャフト=利益社会」ではなく「ゲマインシャフト=共同社会」という意識が浸透していることと関係が深いのだろう。何事も<主体性>や<当事者意識>が大切、という言い方もできるかも知れない。
自分がこの会社の主役なのだと思えば、会社への愛着は自ずから湧くだろう。「愛社精神」だと古くさくて滅私奉公的な匂いがするが、単純に言い換えれば、「自分の会社が好きだ」と感じているということだ。(P187)
この論法は、<国>に対しても使えるな、と思いました。「愛国精神」ではなく、「自分の国が好きだ」、という感じ。
○まだまだご紹介したいエピソードや名言も数多く鏤められたこの本ですが、最後にひとつ、とても感心させられた言葉を引いておわりにしたいと思います。「優秀な人、伸びる人をどうすれば採用できるのか。面接のコツを教えてほしい」と問われた時の、旭化成アミダスの三崎常務のこの台詞である。
「相手は社会人ではなく学生であり、かつ人間であることを意識すること。こちらは磨かれていない原石を探しているのだから、最初から相手は光っていないと思うこと。そして、これは磨けば光るかもしれないと思ったら、面接の最中でも磨きに入ること。チェックするのではなく、磨くのです。面接や面談を何度か繰り返すうちに、どんどん磨きをかけていく。そうすると、本人も磨かれている自分に気づき、信頼関係が生まれてきます。そうすれば、お互いが納得する良い採用に至る可能性が高まるのです」(P36)
蓋し名言! 「チェックするのではなく、磨くのです。」といったあたり、普段の若い人との接し方にも言えることなんでしょうね。例えばウチのバカ息子とか?
○さてライターN さんと私との関係ですが、学生時代のサークルの先輩後輩、といったところです。でもPCの世界では先輩後輩が完全に逆転していて、なにかとお世話になっています。星みっつで、ゴメンナサイ!
第十五回 2006年3月12日(日)
『オレがやらな誰がやる』
[大震災・通信復旧の現場]
中野 明著 定価:本体1800円+税 ISBN: 4-7571-0172-4
出版社:NTT出版 発行日:2005年12月26日
阪神大震災で大きな被害を受けた通信インフラ。被災した人々の通信手段を確保するために、通信インフラを守る人々、すなわち「通建マン」が懸命の努力で早期復旧を目指した――。本書は、通信の仕組みをわかりやすく解説しながら、大災害から通信が復旧していく様子をドキュメントタッチで描き出しています。
また、通信インフラの復旧を通して、そこで働く通建マンの職業人(プロ)としてのマインドを描写。「人間にとって働くとは何なのか」、その答の1つを提示しています。
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○このコーナーの常連:中野明さんの3回目の登場です。
いや、著書はもっともっといっぱいおありになるのだけれども、こちらの筆が追いつかないという状況です。
○タイトル『オレがやらな誰がやる』(!)。ちょっと関西っぽくって、あまり中野さんらしくないのですが、一読して思わずそういう意気込みになってしまった著者の気分というものがひしひしと伝わってきました。仕事をするって、どんな仕事でも大変ですが、こういう人々の暮らしに直結するインフラ関係のお仕事に携わるってことは、やはり、それそれは大変なプレッシャーと責任感の中、上も下も、日夜従事されておられるのだなぁ、と改めて思い知らされた気がしています。
○本書のちょうど中間くらいの、工事スタッフが流す汗について言及する流れで、中野氏の名著『腕木通信』に触れておられることはご愛嬌としても、もともと<テレコミュニケーションは力技>というのは、決して軽んずることのできない真実だと思います。
そうした多くの人々の流した汗と涙の結晶の上に、われわれの快適で、便利なネット社会というものがここまで進化してきたのだ―という歴史の重さは、通信系が得意分野の中野氏が語る言葉なだけに、わかりやすく、またとても説得力がある。
○あのときの大震災では、多くの方々が少なからず被災したわけですが、比較的軽度で済んだ私などは、この本で縷々語られる「通建マン」の方々のご苦労というものは、おそらくそうなんだろうな、どこかで誰かが頑張っているんだろうな、という程度にしかわかっていませんでしたが、とても大変なご苦労だったのだと痛感しました。そしてそれはここで語られる「通信」以外にも、「ガス」「電力」、そして救助の消防、警察、自衛隊、数多くのボランティア………と、あの冬の寒空の中、走り回った多くの人間がいたであろうことは、われわれにとっての大きな財産であると同時に、やはりいつまでも忘れてはならない貴重な経験であったと、改めて肝に銘じないといけないことだと思いました。
○工事はもちろん共同作業で進められる。従って、「オレがやらな……」という気負いと同時に、「オレ一人では……」という謙虚さを併せ持たねばならないことが、物語最後の方で紹介される。
『工事を破綻させないためにも、作業員一人一人は、「オレがやらな誰がやる」という意気込みで仕事に取り組まなければならない。しかし、自分一人だけが張り切ったからといって、工事全体がうまくいくわけではない。あくまで個々人が他のメンバーとの連携を重視し、トータルで工事の成功を目指すことになる。この連携プレー重視が「オレ一人で何ができる」、すなわち「連携プレーなくして何ができる」というマインドになる。
オレがやらな誰がやる。
オレ一人で何ができる。
一見、相反するマインドながら、「オレがやらな」の意識が強くなり過ぎるとカドがたつ。かといって、「オレ一人で」に傾き過ぎると個の存在は否定される。両者が共存し、絶妙なバランスを保っているのが釜野のマインドだ。いや、ベテラン通建マンの身体に染みついたバランス感覚といっても過言ではない。』
これって結局すべての仕事に言える真実なのかも知れませんね。
自分にしかできない特技だから、能力だからといって、「オレが、オレが」と意気に感じることも大切ですが、「一人では何もできない」という謙虚さをどれだけ保てるかが、その人の度量の大きさに通じることなのでしょうねw。
や、読後さわやかな、とってもよいご本でした。
第十四回 2005年9月24日(土)
『あのころの未来 星新一の預言』
最相 葉月著 定価:本体1500円+税 ISBN: 4104598011
出版社:新潮社 発行日:2003年4月25日
夢みたいな世界と悪夢のような現実はすべて彼の短篇に描かれていた。臓器移植、ネット社会、クローン人間…。星新一と考える、科学と人間の望ましい姿。『サンデー毎日』に連載した50編をまとめる。
【目次】
神殿入りを希望します
脳のなかの私
いっそ涙の雨よ降れ
~星新一著『合法』~
宙ぶらりんの
三つのお願い
パスワードを入力してください
犬のことば猫のことば
症状命名愛好症
クリスマス・プレゼント〔ほか〕
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★★
○以前、第四回で瀧 謙一郎著の『神様からのEメール』をご紹介した時にもチラっと触れましたが、ある一定の年代には「星新一」は非常になつかしい作家である。その名前を思い出すだけで、結構その時のさわやかな読後感が想起されてきて、束の間、「あのころ」の幸福感に包まれる。「星新一」とはそんなちょっと特別な作家なのである。この作品は、その「星新一」作品に真っ向から対峙してなに怯むこともない。「あのころ」と「いま」を自在に行き来し、かつきちんとした技術的裏づけに基づいている―<最相 葉月>渾身の一作であると高く評価したい。いや素晴らしい!
○例えば第1話「神殿入りを希望します」の場合で説明すると、まず映画『A.I.』を題材に現代的な関心事、<クローン>技術について語り始める。<クローン>という本来的にはもっともっと多くの人間が関心を持ち、多様な議論と検討の元、厳重に管理されなければならない技術に対して―世の多くの問題と同じように―どこかで誰かがなしくずし的に、どんどんと「事を進めてしまい」、いまや《パンドラの箱》を開けんとしているのではないか………。そんな危機感について彼女は、至極真っ当な筆致。とても説得力のあるやさしい語り口で静かに警鐘を鳴らしているのである。
そしてそこに「星新一」。彼の『神殿』という物語で、不死永生の夢をまさに実現しようとしているある資産家を登場させる。そのようなことを企む輩がいずれ誕生するであろうことを預言していたその慧眼にも敬服するが、それ以上に、そのことが決して人間を幸福にはしないであろうことも理解していた―その星の預言と現実との符合を開陳して、彼女の作品が完結する。
『星は、物語の最後にこう書いている。
――気の毒にな。ずっと生きつづけていなければならないとはな。』
これはあくまで一例なのですが、全50編が大体このような絡まり具合で織り成されている。
「あのころ」と「いま」。「星新一」と「最相葉月」。それぞれの時代と作家の個性がない交ぜになり、進みすぎた技術とその扱いにとても追いつけない人間たちの無様な姿を浮き彫りにする。そして、こうした困難な時代を本当に(!)預言していたのであろう「星新一」のショート・ショートが、その問題と解決の方向を鮮やかに映し出してくれる。そんな素敵なこれもショート・ショートなのです。
○私は彼女のファンなので、ほぼ全作品を読ませていただいていますが、この一作はなかなかいい。
『絶対音感』の衝撃も、『青いバラ』の緻密さもいいけど、この作品はやはりほのぼの読めるところがとてもいい。あまり本を読まない同年代の家人が珍しく「これは面白い」と言って、読み始めたようだから間違いない。
「最相葉月」の良さは、ひとつはその<着眼点の鋭さ>。そしてそれを解明していく<緻密な取材力>。最後に、その膨大な資料に音を上げることなく、破綻のないきちっとした一作品に仕上げていく<構想力と構成力>。本作品も、「星新一」という怪物を相手に、ヒョイヒョイと軽やかに飛び回り、見事に「最相作品」を仕上げてしまったという意味では、大成功ですね。脱帽!
○さて、著者と私の関係ですが、彼女は私のことを知りません。私が彼女の噂を以前から知っていただけです。
彼女のプロフィールの中で、一時期大阪の広告代理店に勤めていたと紹介されていますが、彼女がそこを辞めてスグ、入れ替わりに私の方が入社したという擦れ違いの関係です。でも物書きをめざして会社を辞めた(らしい、という)優秀な女子社員の噂自体は実に魅力的で、こんなに売れっ子になられる前から、ずっと注目させていただいておりましたです。はい。
○最近、文庫でも出たようでお買い求めやすくなっています。書店では、「星新一」の方の文庫も結構いっぱい並んでいて、彼女のこの本が“星新一ブーム”を呼び起こしたのかな、とも思います。
第十三回 2005年7月17日(日)
『生活宇宙52話』
幸福参考書
櫻井 公著 定価:本体1100円+税 ISBN: 4-8355-0425-9
出版社:文芸社 発行日:2000年8月1日
くさらない心のごちそう
いっただっきま〜す。
「ふにゃふにゃやわらかアタマと、ばりばり硬派の志が世の中を観察する。アタマの回路を編集しなおすための、すてきな例題集だ。」
鷲田 清一 大阪大学大学院教授(倫理・哲学・ファッション)
目 次
【第1話】 階段を上がる人と階段を降りる……人 【第2話】 でも「行っちゃイヤ」!
【第3話】 ヌードでゆく。 【第4話】 〃ありがとうMAGIC〃
【第5話】 〃PRINCIPLE〃な人よ。 【第6話】 〃汚いクリーニング店〃
【第7話】 盗まれた唇。 【第8話】 〃志〃という衣
【第9話】 入れ知恵 【第10話】 〃竹人間〃
【第11話】 0・5秒の未来 【第12話】 ベンツに罪はない
【第13話】 成功する話。 【第14話】 野生の指切り
【第15話】 〃タタキ買い〃 【第16話】 Catch the 〃Rainbow〃
【第17話】 豚の「幸せ」 【第18話】 バック・トゥ・ザ〃NOTHING〃
【第19話】 生活目的 【第20話】 〃やわらかたい〃
【第21話】 〃勝ち観〃 【第22話】 振り返った車掌
【第23話】 遠い浮浪者 【第24話】 イメージの奴隷
【第25話】 幻の中年暴走族 【第26話】 〃責任常識〃
【第27話】 幸せのキーホルダー 【第28話】 コペルニクス連邦
【第29話】 ツインズ成功法 【第30話】 〈黒いごちそう〉
【第31話】 思い込み登山 【第32話】 すれ違った人
【第33話】 買物操「従」法 【第34話】 〃キャンドル先生〃
【第35話】 沈黙のエレベーター 【第36話】 協カな関係
【第37話】 温室列島 【第38話】 「火事だー!」
【第39話】 〃親切な釣り人〃 【第40話】 「手」「足」の言い分
【第41話】 SAY「YES」 【第42話】 〃レンタルEARTH〃
【第43話】 味の素 【第44話】 低い耳。
【第45話】 NO・2の生き方 【第46話】 〃記憶財産〃
【第47話】 少年の疑問 【第48話】 「バランス」時々「ブレーキ」
【第49話】 〃十??歳のスチュワーデス〃 【第50話】 ロマンチストの特権
【第51話】 嫌われた私 【第52話】 楽な階段
【epilogue】笑〜
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★☆
○これは何人かいらっしゃる私の<プランニングのお師匠さん>のうちのおひとり=櫻井 公さんの珠玉の一作である。
前の会社での朝礼スピーチに使われたお話が素になっている―と「はじめに」に書かれていましたが、その時は私は卒業した後だったので、どんな風にお話されたのかは存知あげませんが、ここに書かれていることのひとつひとつが、「あぁ、櫻井さんだなぁ」と思わせるものばかりです。ものの見方や考え方。またその表現の仕方について、いろいろなことを学ばせていただきましたが、その独自のスタイルを徹底的に磨き上げ、まさに<真剣>勝負で企画に臨むその姿勢や居ずまいの正しさにはいつも勉強させられます。
○櫻井さんをご存知ない方でも、敢えて長々とご紹介させていただいた上記:目次を一読されれば、どんなことが書かれているのか、どんな切り口でエッセイをものしているかのご様子が何となくでもつかめるものと思います。ひとつだけその雰囲気をよりご理解いただくためにさわりを少しご紹介いたしますと、【第47話】 少年の疑問からは、こんな一節が思い出されます。
たとえば、次の質問にキミは答えられるだろうか?
「なぜ海に塩があるの?」「なぜ星はみんな丸いの?」
「人間はどこから来たの?」「家族って何なの?」
「いのちって何?」「結婚って何?」……。
(略)
考えてみると、ボクたちは、身の回りにあるものについてさえ、実は何も知らないことに気づきます。
(略) 目の前の物事に対して、「WHY?」あるいは「WHAT?」を投げかけてみましょう。
きっと独自の新しい視点からの答えが見つかります。
もっとも、肝心の「自分っていったい何?」という根本的な質問を置き去りにしての話ですけどね。
○中身については、いずれじっくりお読みいただければ、と思いますが、ここにこの作品をご紹介しようということで、念のためにネット検索で調べていたら、こんなサイトがあって、驚かされました。
ナント<オンライン文芸支援サイト:梓>! しかも関西の編集者たちで行っておられるようで、世の中にはいろんなところで、いろんなカタチで頑張ってる人がいるもんだなぁと改めて関心させられました。そしてこの中の「著者に訊け!」という欄で、櫻井さんのインタビューが掲載されていますし、なんと作品のDLまでできてしまうので、ビックリです。是非みなさんもDLしてご一読されてくださいませ。(多分、文芸社版はもう手に入らないのではないかと思われますので)
http://www.wp-azusa.com/index.htm
○作品批評については、この本の巻末に寄席られた「読後感想文」の中に小生が贈らせていただいた文章がございますので、その引用で様子を見ていただければと思います。『〃あの人の一言〃――というものがある。「その時その時を大切に、全力で取組んでおれば、決っして後悔はしないヨ。たとえ結果がうまくいかなくっても自分では納得するハズだから……」桜井さんの場合はこのお言葉なのです――。 私28才。桜井さん?才のことである。きっとご本人は何気なく仰しゃられたことで、もうお忘れのことと思いますが、私にとっては、いつ倒れてもおかしくない頼りない我が身を支えてくれる金科玉条となっているのです。けだし名言。桜井さんは箴言の名手なのです。……平らな物言いで、外からじんわり、やんわりと包みこんでくれるお風呂のような箴言と言えるのではない、でしょうか。その温浴効果と桜井さんのお人柄が充ち溢れたこの一冊。『生活宇宙52話』を私は、〃大人のための教育童話(ビルドゥングスファンタジー)〃と考えます。倉橋由美子よりも、桜井公――ポストバブルの世の中にもマッチしているのではないでしょうか……。』
第十二回 2005年7月2日(土)
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
身近な疑問からはじめる会計学
山田 真哉著 定価:本体700円+税 ISBN: 4-334-03291-5 光文社新書
出版社:株式会社光文社 発行日:2005年2月20日
数字大嫌い、暗記も苦手
でも会計は知っておきたい
大ざっぱに会計の本質をつかむ
◆挫折せずに最後まで読める会計の本
この本は、「会計が嫌い」「会計が苦手」「会計を学んでも意味がない」と思っている方のためにあります。「会計」はけっしてやさしいものではありませんが、《会計の本質的な考え方》はそれほどむずかしくはありません。本書では、日々の生活に転がっている「身近な疑問」から考えはじめることで、会計の重要なエッセンスを学んでいきます。本書は、いわゆる「会計の入門書」ではありません。細かい財務諸表はひとつも出てきませんし、専門用語もそれほど多くはないので、気を楽にして、ひとつの読み物として読んでみてください。きっと会計に対する見方が変わるはずです。
◆身近な出来事から「会計」がわかる!
スーパーの完売御礼でわかる「機会損失」と「決算書」
飲み会のワリカンでわかる「キャッシュ・フロー」
住宅街の高級フランス料理店でわかる「連結経営」
2着で満足する麻雀打ちでわかる「回転率」
商品だらけのお店でわかる「在庫」と「資金繰り」
【目次】
プロローグ どうして「会計」はむずかしいのか?
エピソード1 さおだけ屋はなぜ潰れないのか?〜利益の出し方
エピソード2 ベッドタウンに高級フランス料理店の謎〜連結経営
エビソード3 在庫だらけの自然食品店〜在庫と資金繰り
エピソード4 完売したのに怒られた!〜機会損失と決算書
エピソード5 トップを逃して満足するギャンブラー〜回転率
エピソード6 あの人はなぜいつもワリカンの支払い役になるのか?〜キャッシュ・フロー
エピソード7 数字に弱くても「数字のセンス」があればいい〜数字のセンス
エピローグ 普通の人が「会計」を学ぶ意味
あとがき
ことわざ会計学
ひと言コメントつき会計用語集
索引
(以上、楽天ブックスより引用)
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★★
○文句なしに面白い! 目下ベストセラー街道をひた走っているこの本のことは、あちらこちらで取り上げられ、大評判となっていますので、私ごときが今更云々することではないかも知れませんが、一言。「いや、素晴らしい」。こういう本を書こうという視点・切り口の鮮やかさ、そして兎にも角にもこうして書けてしまうセンス。そしてこのタイトルの素晴らしさ!
○「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」 会計のことなんかまったくわからない私が読んでも「なるほど、そういうことだったんだ」と唸らされたり、「や〜、そういう意識は持たないといけないなぁ」と強く反省したりとなかなか勉強になりました。
○内容面はあまり詳しく紹介するとネタばれになって、これから読まれる方に申し訳ないので、最小限にとどめようと思いますが、表題となった「さおだけ屋」の話よりも、「50人にひとり無料」のANAの「楽乗(らくのり)キャッシュバックキャンペーン」のからくりや、「在庫だらけの自然食品店」のエピソードの方が、意外な盲点を突かれたようで、『目から鱗』。とても参考になりました。
○さらに感心させられたのは、『人脈は回転率で考える』という項目の中にあった、こういう一節です。
〜「人脈」というと、なるべく多くの業種の幅広い世代の人々と関係を持つことに重点が置かれがちだが、それは大きな勘違いだと思う。―(中略)―100人と薄っぺらい関係を築くのではなく、100人の人脈を持つひとりの人物と深くしっかりとした関係を築くべきなのだ。〜
大事なのは、名刺の数ではなく少数の信頼できる人間との深い友好関係だ、と言っているのである。この若さにしてこの洞察力。まさに舌を巻きます。(早速、<ウラ版あいうえお>に載せさせていただきます)
○この著者、驚くことになんと「1976年生まれ」とのこと。私よりも私の息子の方に近い年じゃないか!? や、ビックリ! 今やマスコミの寵児と言っても過言ではないご活躍ぶり。詳しい様子は著者のサイトを見ればわかります。ご興味がおありの方はどうぞ。
【著者の公式サイト】http://www.cam.hi-ho.ne.jp/shinya-yamada/
○え? 何か忘れてないかって? ハハ、そう著者と私との関係ですね。
このコーナーの「第三回」でご紹介した爺こと「大黒屋仁兵衛」さんのご友人(もちろん山田さん)の息子さんなのだそうです。爺とこの前呑んでいて判明しました。そのご友人、さすがに息子さんのご活躍にやはり鼻高々だったそうです。そりゃそうですよね。
とまぁ、そういうわけで<友人の知人の息子さん>もぎりぎりセーフだろうということで、おそらく当コーナー最大部数の本(今日現在、彼の日記では70万部突破だそうです)のご紹介でした。
第十一回 2005年5月28日(土)
『インターネット広告革命』
クロスメディアが「広告」を変える。
横山 隆治著 価格:1890円(税込み) ISBN: 4-88335-130-0 B5版、250ページ
出版社:宣伝会議 発行日:2005年5月1日
ラジオ広告を超えた「インターネット広告」。ブロードバンド化による広告の表現力アップ、画期的なターゲティング技術、従来メディアと組み合わせるメディアプランニングで、これからのマーケティング活動はインターネットが中心となる。
<主な内容>
序章:インターネット広告概論
第1章:TVCMがスキップされる時代に、広告メディアとしてのインターネットを再認識する。
第2章:映像・音声・インタラクションで、「体験するクリエイティブ」を作る。広告表現革命。
第3章:画期的なターゲティング技術で、広告投下効率をあげる。ターゲティング革命。
第4章:従来メディアとインターネットを組み合わせて、広告キャンペーンを最適化する。メディアプランニング革命。
第5章:有益なコンテンツを提供し、企業Webサイトでお客様とコミュニケーションを図る。
第6章:究極のパーソナルメディアである携帯電話を使った、モバイル広告の可能性を探る。
第7章:ダイレクトマーケティングにおけるインターネット広告の効果の考え方を見直す。
終章:今後のインターネットと広告キャンペーンの構造変化
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★★
○IT関連が続きます。ま、これも時代を写す鏡なのかも知れません。
しかしこの本は、単なるインターネット本ではありません。結論から言うとこれは、<インターネット広告を中心に据え直した広告革命についての預言書>になっているのです。2004年のインターネット広告費は1814億円(電通調べ)に達し、ついに4大マスメディアの一角ラジオ広告を抜いたことで、世間的にはそのこと自体が大きく取り上げられ、マス+ネットの時代から第3のマスメディアの出現だとか、いろいろ言われ、ライブドアのニッポン放送株買収問題に象徴されるような、妙に浮ついた議論ばかりが繰り返されてきた。
しかし著者の視点はそんなところにはない。彼の考える今後のビジネスモデルの中では、インターネット広告とは、何がしかのものへの<つけたし>ではなく、あくまでもネットこそが中心にあるべきだろう―と標榜するものである。その云いや良し。至極明快にして弁舌サワヤカなその内容は、ご本人のお人柄にも相通じるものを感じます。
○それを可能にするには、3つの要素がある。
a.広告表現革命
b.ターゲティング革命
c.メディアプランニング革命
a.については、所謂「バナー広告」にイメージされる限定的な表現からの完全な脱皮が、ブランディングも可能にする。
b.については、究極までセグメント可能な広告配信システムとリスティング広告の伸張という現象が、それを予兆させ、ひいては通販広告すら取り込むことになるだろう、と。
c.については、従来型の「マス+α」のメディアミックス(足し算)ではなく、広告効果の掛け算となる「クロスメディア」のキャンペーンデザインのあり方について言及し、<インターネット広告革命>のなんたるかをわかりやすく解説してくれる。第1章の「情報入手に関する各メディアの比較」において、テレビとインターネットの両方が平均以下になる商品カテゴリーがほとんどないということから、テレビとインターネットの2大メディア化を謳ったあたりなど、まさに目から鱗って感じでした。インターネット広告費について、著者は言う。「私見であるが、テレビの半分(約1兆2千億円)はあってもおかしくないと思う。」
*カッコ内金額は筆者の挿入。
○当然、上記のような結論に至るには「D.A.C梶@副社長」という彼の肩書きがそういう結論をよしとする、という事情はあるにせよ、昨今の「ダブルウィンドウ化」や、HDDの利便性を使った「録って見」など、誰しも覚えのある現象が日常化し、またインターネット自体の「長時間視聴」ということも多くの方の認めるところだろう。そしてまた、昨今よく言われることには最近の耐久消費財の購入前接触媒体に「企業サイト」が多く挙げられていることも見逃せない点である。購入への「比較検討ステージ」における重要メディアという位置づけはほぼ今後も揺るがないことだろう。そんなフィールドが醸成されてきた中、上記a.〜c.のような技術革新・意識革命が、<インターネット広告>の真の姿を覚醒させる―というのは決して突飛な思いつきでないことだけは確かである。
○さて、著者と私との関係ですが、友人というには失礼にあたり、まぁ、年に何回かお会いすることになったお取引先という関係です。前職が私の在籍する会社、という縁もあり、現在とってもお世話になっています。元々業界きっての理論派という評判も高く、昨年この著書にあるようなアメリカのリッチメディアを見せていただきながら、少人数で彼の「インターネット広告の講義」を受けたことを貴重な経験として想い出します。ますますのご活躍を!
第十回 2005年5月8日(日)
『SEOで検索エンジンもユーザーも味方に付けるホームページ改造術』
「見にきた客は逃がさない!」
もう、HTMLタグをいじって検索上位を目指すだけのSEOから卒業しませんか?
吉村 正春, 田中 亮著 定価:本体1,500円 +税
出版社:秀和システム (2005/01) ISBN: 4798009768 発行日:2005年1月4日
目次
プロローグ SEOの意味と流れを押さえよう
第1章 検索エンジンの仕組みを知ろう
第2章 ユーザーのニーズを掴む! キーワード選びのコツ
第3章 キーワードを伝えるタグ打ちテクニック
第4章 SEOに適したサイトデザイン
第5章 サイト評価を上げる被リンク獲得法
第6章 ディレクトリ型検索エンジン対策
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○仕事上の必要もあって、一読いたしましたが、大変勉強になりました!
ホームページ作成ソフトでこのサイトを構築している小生には、未だに<タグ>のことはよくわかっていませんが、それでも「ホームページ」を如何に魅力的なものにするのか、如何にお客さんに来て貰うのかといったあたりの奥の深さを知ることができただけでも儲けモノって感じです。
Googleが“ロボット型”で、Yahoo!が“ディレクトリ型”で情報収集していることくらいは知っていましたが、そこにも「スパム行為」への対策がなされていたことや、「スニペット」の大事さなどなど、いろいろ参考になりました。
特に、70%のユーザーがトップページ以外のページにやってくる―という指摘には、ハッとさせられましたね。も少しひとつひとつのページを大切にしなくっちゃってことですね。「TOP」や「BACK」のボタンを置いてるだけでは、ユーザーを誘引できませんよってことなんだけど、そこまで触るのはちょっと面倒かな? どうしようかなって、ちょっと悩んでいます。(?_?)
○恥ずかしながら、人気度を測る「リンクポピュラリティ」という概念があることも、Googleに「PageRank」というものがあることも、この本を読むまで知りませんでした。早速、自分のサイトのランクを調べてみました。どうせ「0」とか「1」なんだろうと思ってトライしたところ、ナント「2(!)」でした。良かったよかった。Yahoo!で「8」、ZAQは「5」だったりなので、まずまずでしょ。だけど、このコーナーでお馴染みのMARCOさんのサイトは「3」だったので、ムムッ!負けてんじゃんってことで、ちょっとグスン。(;
_ ;)
○「キーワード」の大切さも懇々と解説されていましたので、改めて当サイトのキーワードも見直してみました。他の優良サイトにリンクを張って貰うことが重要らしいので、これを読んだ読者の皆さん! 是非、リンクを張ってください。よろしくお願いいたします。リンクフリーですよ。
○さて、著者と私との関係ですが、吉村さん、田中さんではなく、巻末に【執筆協力】として名を連ねておられる「曽利 昌広さん」と目下のところ、毎日のように、仕事で顔を合わせる関係にしていただいている―ということです。まだまだ勉強が足りませんので、曽利さん! よろしくご指導願います。
第九回 2005年5月3日(火)
『龍以後の世界』
村上龍という「最終兵器」の研究
陣野 俊史著 定価:本体1,600円 +税
出版社:彩流社 ISBN:4-88202-652-X 発行日: 1998年 7月10日
暴力、男根主義/女陰主義、インモラル、共同体、音楽、サッカー…村上龍の小説の出現によって現代日本は確実に変化した。
目次
プロローグ 龍以後の世界
1 龍を龍たらしめているもの(暴力と粘膜の共同体
各小説のポジション)
2
スポーツと音楽の快楽(スポーツ小説集―「他者」とどのように出会うか
村上龍とともに、パンク以降のロックを聴くことは可能か?)
3
村上龍の光学(毛穴論―中上健次と村上龍の1990年代
動物になること―小説という最終兵器)
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★☆
○この本はちょっと奇妙な本である。「龍以後の世界」というタイトルそのものからして、作家『村上龍』というものをひとりの作家としてというより、時代・現象・気分……といったものの総体として、もしくは象徴として語ろうとしていることが伺われる。
<陣野俊史はこの本で、村上龍の小説を説明することを、最初から放棄している。プロローグやあとがきで断っているとおり、この本は村上龍についての作家論でも作品論でもないのだ。彼は、「村上龍」は触媒だという。触媒である以上、それそのものを深く語ることはできず、必ず別のところへと運ばれたり、別のことが起こってしまう。>と作家『星野智幸』が図書新聞 1998年9月19日号で語っているのは、まさにそのことなのだろうと思う。
http://www.hoshinot.jp/jinno.html
○とにかく私たちは『七八年から八二、八三年の期間は、なによりも文化を総体として語らなければ意味がない時期なのではないか』、『つまり音楽が音楽として自立することが困難になり、絵画が絵画として自立することが不可能になった時期が、この時期だったのではなかろうか』云々、といった記述に立ちどまり強く共感するものを覚える。それは図らずもその時代に怠惰な学生生活を送っていた我が身の自我の芽生え(!)と二重写しになって蘇ってくる原体験と云ってもいいものだからである。『それが悪いとか、いいとかいうのではない。善悪とは無関係に、文化はあくまでも総体として私たちの前にあった。』 そしてその<文化総体を泳ぐ人>として、作家『村上龍』は規定される。それは「ロックの死」と共にやってきた!と。
○著者があとがきで、『村上龍は、私にとって特権的な作家だった。』と書く時、それは私にとっても同じ感慨を齎してくる。『世代論かもしれない。そうでないかもしれない。どちらでもいい。』 そうさらに云うなら同郷出身だったから、ということもあるかも知れない。しかしそれは時代の大きなうねりや、どうしようもなく停滞していく文化の成熟といったものからすると、些少な理由なのかも知れない。いずれにしてもこの作品は、元々いくつかの雑誌に発表されたものを集め、書き下ろしを加えて再編集されたものという事情はあるにせよ、なかなか秀逸な『村上龍論』として成立していると私は思う。個々の作品の評価についても、作家個人のバックボーンや思想といったものに対する理解も、相当読み込んだ読者でなければ、できない領域にまで達していることは確かである。スポーツや音楽といった村上龍を語る際、決して避けて通れないジャンルへの理解も、彼自身非常に明るいということも、作品理解の的確さに大きく寄与しているのだろう。見事です。
○村上龍と言えば最新作『半島を出よ』を読んだ。常に時代の半歩(一歩ではない)先を行く著者ならではの、テーマ設定。見事ですね。毒虫や爆薬の精緻な描写というものには多少辟易させられましたが、故郷福岡が北朝鮮の精鋭部隊に占領されるという突拍子もない(でもない?)シチュエーションとその中で生きているひとりひとりの日本人、北朝鮮人の姿が実にいきいきと描かれていて、大層読み応えがありました。頑張ってますね。
○著者の陣野君は、「大学時代の某文芸サークルの後輩」です。
今やネットで「陣野俊史」を検索したら、2000件以上ヒットする高名な「フランス文学者・文芸批評家」として、ご活躍です。これ以外にも「フットボール都市論―スタジアムの文化闘争」(青土社)、「ソニック・エティック―ハウス・テクノ・グランジの身体論的系譜学」(水声社)、「じゃがたら」(河出書房新社)など著書多数。目の眩むような守備範囲の広さです。
彼とはうだうだ云いながら酒を呑んでいた記憶多数ともうひとつ忘れられない思い出があります。彼に田原総一郎の「電通」(朝日新聞社)という単行本を貸してもらい、それがきっかけで広告業界を志望するようになったので、ある意味、今の私の運命を決めた一冊ということになります。その本は、きちんと彼にお願いして譲ってもらい、今も私の本棚に並んでいます。
第八回 2005年3月26日(土)
そこまで話す!?
『いい家づくりのツボ!』
大阪ガス住宅設備 後悔しない家づくり実践研究会編
北薗 修身著 定価:本体1,200円 +税
出版社:碧天舎 ISBN:4-88346-611-6 発行日: 2004年 4月20日
はじめてマイホームを建てる人のために、
家づくりの舞台裏を知りつくした
住まいづくりのプロが、
思わずホンネで書いちゃいました。
【目次】
第1章 知っておきたい! いい家づくりの基本
第2章 プロが教える! とっておきの話 いい家づくりの秘訣
第3章 知らないとソンする! 価格の秘密
第4章 こっそり聞いちゃお! 営業マンのひとりごと
第5章 誰も教えてくれなかった! プランづくりのツボ
*この研究会の詳細はコチラ。
http://www.foryourlife.info/ogj-house/index.html
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○「家」を建てるのは、難しいらしい。まぁ、どんな仕事でもみんなが満足する、納得するというものはないのでしょうが、こと「家」というのは毎日そこに住み、家族が暮らしを営んでいく場だからこそ、満足のいかなかった点や、失敗したな、と思うところがいつまでも気になるからかも知れませんね。
あの『冬ソナ』でユジンが設計した<森の中の理想の家>は、コストがかかり過ぎるということで≪不可能の家≫と呼ばれ、お蔵入りするエピソードを想い出します。
○さて今回採り上げるこの本には、「家づくり」における基本から裏話まで、大切なヒントが鏤められている。
例えば第2章では、<間取りの北側 外観の南側>というキーワードから、土地選びについての貴重なアドバイスが行なわれる。つまり「北側に道路がある土地」の場合、「お風呂やトイレなどの水まわりのものは、リビングなどに比べて陽当たりはそれほど重要ではない。そのため、これらは建物の北側に配置することが多くなります。」そのため、大きな窓が並ばない外観デザインはある程度制限させられずにはいられないが、逆に各部屋への動線(廊下など人が通るところ)のスペースが少なくて済むので、スペースが有効に活用できる………などなど。フム。納得。
○また、最近では大手の住宅会社でも盛んに宣伝しているようですが、<家の中の風の流れ・抜け道>についての大切さについても懇切丁寧かつ具体的に述べられていて、とてもためになります。故・宮脇壇の著書を読んだ時の感動や、<家>というものに対する意識づけとはまた別の、フツーの人たちが家を建てる際のやさしい視点の知恵や留意点、工夫といったものが満載で、基本マニュアル的に使えるのではないかと思います。大阪ガスという大企業のグループ会社がこういう活動もされていることにまた脱帽!好感が持てます。
○著者と私の関係は、「かつて勤めた会社で同僚だった」というものです。こういうものを書いたので、是非「買ってくれ!」という内容のメールで教えて貰いました。深夜まで酒を呑みながら、いまとなってはとっても取るに足りぬことで激論した仲でもあり、そんな義理もあるので喜んで購入させて頂きました。でも中身は確かに太鼓判です。マイホームをこれから考えておられる諸兄に是非!
第七回 2005年3月19日(土)
『ケータイ用語辞典』
Publisher/ketai-hakase 2004.8
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○昨年の夏―ということで、ちょっと旧聞に属しますが、この本の紹介がまだでした。
さても裏表紙に<Publisher/ketai-hakase 2004.8>と記されたこの本。定価がないので書店売りはされていないようですが、何とも怪しげかつ魅力的なこの辞典は、文字通り『ケータイ博士』の労作です。(参考までに、カンパとして¥1000という値がついていたようです)
○<アカウント(account)>にはじまりXHTML(Extensible Hyper Text Markup
Language)に終わる120頁ものの大作です。(あ、今目次の誤植見つけちゃった)
携帯電話の目を瞠るハードの進化とコンテンツの向上には、既にして大抵の大人がついていけていないのではないかと思いますが、その日進月歩の変化の渦に果敢に飛び込んでいく著者のその意気たるや、見事である。<HTML>、<TFT液晶>、<ISP>といったあたりなら何とか。でも、<WAP>とか<WORLD WALKER>なんてなると、ン?何? わかんないでしょ? わかります? WAPは<Wireless
Application Protocol>の略で、「携帯電話やPDAなどモバイル端末向けに開発された無線経由での通信規格のひとつです。最新バージョンは「WAP2.0」で。国内では唯一auの携帯電話が対応しています。」ということらしい。ついでにWORLD WALKERは、「NTTドコモの国際ローミングサービスです。海外に旅行に行った場合でもワールドウォーカーの携帯電話があれば、いつも使っているNTTドコモの携帯電話にかかってきた電話を転送することが可能です。」ということらしい。ま、これは私が“Vユーザー”だから知らなかったのかも知れませんが、携帯だけでなく固定やPCまわりについても必要なワードが満載で、なかなかに高度かつ有用な内容になっています。是非「一家に一冊!」みたいな本ですね。
○博士のことは下記ホームページで多少のことはわかると思いますが、なかなかユニークで謎に包まれた人物のようです。大学時代は「指揮棒を振っていたらしい」という噂まであります。著者と私の関係もこの際、<謎>ということにしておきましょうか。まあ、ヒントとしては、今は毎日のようにお会いしている方ではあります。
http://www.ketai-hakase.com/
サイトでは「ケータイ博士は、写真もお得意!?」と写真コンテストでグランプリをとられたことを自画自賛されているようですが、まぁ<親バカ>ですかね? 可愛い娘の写真だったものだから、やっぱ嬉しいのでしょうね……。(笑)
第六回 2005年1月29日(土)
業界人、就職、転職に役立つ情報満載
最新『広告業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』
中野 明、蔵本 賢、林 孝憲著 定価:本体1,300円 +税
出版社:秀和システム ISBN:4-7980-0986-5 発行日: 2005年 2月1日
広告会社の最新動向がわかるトピック満載!
●広告業界の全貌が一目でわかる
●極めて多様な広告の種類と手法
●広告業界の「旬」のトレンドを知る
●個人情報保護法施行で変わる広告
●広告の市場規模とマーケティング
●インターネット専門広告会社の登場
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★★
○2005年。今年に入って最初のオススメ本がコレ!! そして初の“五つ星”となるのがこの本。
最初に、これが単なる「広告(業界紹介)本」ではないことを強調したい。
もちろん秀和システムの『○○業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』というシリーズの中の一冊であることは確かで、そういう面では、所謂「入門本」というか「ノウハウ本」というか、そういった類のものと同一視されがちなのはやむを得ない。が、しかしこの本にはそういった流れ作業的工程でつくられた多くの“ただ消費されてしまうだけの書物”とは異なる、密やかなやさしさ、人間への尽きせぬ想いと関心。人が営む様々な行為や愚かしさへの愛、といったものを感じるのである。
○それは何故か? 「はじめに」を見てみよう。
『想像してみてください。ドラえもんに出てくる「もしもボックス」という秘密道具で、「もしもこの世から"広告"がなくなったら!」と唱えてみたら―。』
という出だしで、いかに「広告」が人々の生活に入りこみ、なくてはならないものになっているかが語られる。「アイーダ」の劇中歌がいつのまにかサッカー日本代表の応援歌のように謳われている現象や、小田和正の「あなたに会えて」が印象的だった某CMが、「たったひとつのたからもの」という本(ストーリー)になり、テレビドラマになったことなどから、「広告」の無限の可能性、人々の生活への著しく高い親和性といったものが解説される。
○その<広告業界>がいま大きく変わろうとしている。
そもそも極めて資本主義的産業である<広告ビジネス>が社会・経済の変化に伴って変化していくことは、当然と言えば当然な成り行きなわけですが、大手広告会社の合従連衡と寡占化。経済のグローバル化に付随して展開される業界自体の改革と開放。外国(外資)という外圧もあっての媒体ビジネスの漸進的な地殻変動。ウェブドラマやアフィリエイト広告といった形で次々とその可能性を予感させるインターネット広告の急成長と長らくお茶の間の中心的存在だった「テレビ」の行く末。。。。。「広告」自体、そもそもは何がしかの<媒体>に乗っかるものだったわけですが、そういったものの考え方は既にしてもう終わっている。その≪媒体>広告≫といった主従関係すら、根本的なところからのチェック・見直しが進められ、今後は思いの外ダイナミックかつドラスティックにその転換が行なわれていくだろうことが仄めかされている。
その広範な視点と緻密に集められた情報は正確で、業界を志す者にとっては最適なバイブルとなるものと思われる。
○ここにあるのは、あくまでも≪広告への絶対的な肯定と支持≫であり、≪広告に魅せられた人間の広告への愛と夢≫なのである。換言すれば≪すべての広告作品、広告ビジネス、そして広告ビジネスに携わる多くのアドマンに捧げる限りない共感と変わらぬオマージュ≫が捧げられているのである。
○さて3人の著者と私の関係ですが、関西のこの業界の端っこの方で知り合った、まぁ、ひとつの<呑み仲間>といったところです。出身、年齢、趣味、特技といったモノには殆ど共通するものはなく、でもたまに会ってガァーっと酒を呑むと必ず翌日は頭が痛いといった関係です。
昨年のちょうど今頃、呑みながら「今度、広告の本書かへんかぁ〜?」「そうやなぁ」「ほんなら、こんな感じの本がいいんちゃう?」みたいな会話から始まったプロジェクトの成果がこれなんです。
だから“五つ星”はショウガナイっていうか、ま、許されるでしょ。
*同時に、中野 明氏単独で姉妹本:最新『放送業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』も上梓されていますので、こちらの方もどうぞご贔屓に。
第五回 2004年11月21日(日)
視覚情報社会の文化戦略
『映像化ビジネス』 猪俣 謙次著 本体価格:1,553円 (税込:1,631円)
出版社:東洋経済新報社 ISBN:4492551832
サイズ:単行本 / 217p 発行年月: 1991年 02月 ★現在、品切れ中。
街にあふれるアニメ、シミュレーション・ゲーム、コンピュータ・グラフィックス、ビデオ…。映像でモノを考え,表現する時代になってきた。上手に像察力・創像力を身につけるための本。
【目次】
プロローグ 映像化(ビジュアリゼーション)パワー多彩/1 目でみる空想―帰ってきたウルトラマンと超ゴジラ/2 現実、未来、空像を結ぶコンピューター・グラフィックス/3 ライフスタイルに組み込まれた映像共鳴システム/4 ストック・イメージとの共振―実人生のシミュレーション/5 多次元化する映像との上手なつきあい方
(以上 楽天ブックスより)
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★☆
○先ずは、「1991年2月」という発行日の早さに驚かされる。
確か私自身がこの名著を見出し、その中身の充実度に感嘆させられながら読破したのが、おそらく1993年とか1994年といったあたりだったのではないかと記憶するので、その先見性にも改めて頭が下がる想いでいっぱいである。
まだ“バブル”の残照のあったYES横浜博が1989年。大阪花博が1990年。スーパーファミコンの発売日が、(いま調べてみて)1990年11月21日、ということなので、その喧騒の最中に早くもその先を見据えて、この本を著していたということになる。
○内容は、表題そのもの。映像ビジネスの様々な展開と今後について、旺盛な取材と資料をもとにその<現在と未来>を読み解いたものである。「1秒200万〜700万円」といわれたCGがいかに使い易くなっていったか。映画の中で年々高まるFSXの要素。生活の中に着実に入り込んでいるコンピュータ技術とゲームビジネス。。。。。。。。etc.
あの頃から比べると<家庭用ゲーム機の高度な発展と業界としての低迷>や、<Windows95の出現とPC革命>。予想以上に進んだ<携帯電話の普及とブロードバンド社会の実現>などなど、私たちを取り巻く環境は大きく様変わりしている。しかしその中にあって、著者の言う映像化社会の主従についての考察は古びることなく、いまもって私たちに課せられた問題でもあったりするのである。
「さて、映像世代は、これから絶えることなく増え続け、やがて皆映像世代へなることは時間の問題である。これによって、映像に接するための目的と接する映像の質、そして接するための手段となるハードによって様々な映像つきあいが生じることが予測される。
今では、テレビに振り回された映像崇拝のつきあいは遠い過去の話のような感覚のモノとなり、ビデオやテレビゲームを介して映像と戯れるつきあいへと転じている。この場合、ハードの性格上、大きなムーブメントを起こしつつも「見る」という行為においての結びつきしかないために、個人の生活レベルでは時間と金を消費するだけの発展性のない関係で終始している。だが、次に来るモノは、日常生活の中で映像と同化するつきあいである。それは、コンピューター画像も取り込んだ、それまでの主従関係を逆にした人中心の多種多様な映像つきあいの出現なのだ。(P205)」
○著者と私の関係は、「福岡市立の某小学校で6年3組の同級生」というものです。
私の父親の転勤や転宅の都合で、中学校もまた違う校区に引越ししたため、たった1年間しか一緒ではありませんでしたが、当時は結構仲良くさせてもらっていた記憶があります。プロレスが大好きで、休憩時間に他の友達と技をかけあっていた彼の姿を覚えています。
この本と出会って、著者名に気がついて年賀状で確かめた時は、ちょっぴり誇らしく思いました。
○最近では、『ガンダム本』の大家となっておられるようで、ダイヤモンド社からの「ガンダム神話」シリーズは大ヒット!
ネット上では入荷待ちする方々もいらっしゃるようで、ブックサイトなどでは、定期的にチェックするように、などと書かれています。スゴイですね。
○最近作では、昨年末に出版された「ガンダム・オペレーション」シリーズ全6巻(トイブックス刊)の編集長を務められた模様。フィギィアありジオラマありのマニア垂涎のシリーズのようで、こちらも同じく大ヒット。
ネットショッピングでも品切れ続出のようでした。
○「ガンダム」人気は衰えることを知らず、数年前に私自身、<バンダイ>をテーマにした遊園地イベントで、ガンダムの何分の一か(忘れた)の立体モデルを立たせたり、メンテナンス中(という想定)の上半身モデルを持ち込んだり、といったことを手がけたこともありましたが、最近でも後輩たちが、<GNO>、<GNOU>といったネットワークゲームをビジネスでタイアップを図ったりして、その恩恵に浴しているようです。
第四回 2004年11月6日(土)
20話のショートショート
『神様からのEメール』 瀧 謙一郎著 定価:本体952円+税
人類の横暴を見かねた憂いを隠しきれなくなった神様は、警告のEメールを出すことにしました。が、しかし…。異色の近未来短編集。これらの物語、単なる空想と、言い切れますか。
(東京図書出版会サイトより)
IT革命時代におくる20のショートショート
アインシュタインのクローンを使った投資商品を開発
…「アインシュタイン・ファンド」
生命科学技術の進歩は、居酒屋のメニューに影響を与えた
…「産地の変化」
人類の横暴を憂えた神様が、人類にEメールを送る
…「神様からのEメール」
パソコンに自分の記憶をダウンロードしたが …「記憶の保存」
日本ではヘルパーの派遣が一大産業に。そのヘルパーとは …「ヘルパーの訪問」
ジュリエットはクローンのロミオと恋に落ちる
…「許されぬ愛」
ビジネスモデル特許に続く、超高度特許社会の到来 …「ライフモデル特許」
永遠の命を得た人類に、突然子供が産まれなくなった …「効率化の促進」
(書籍の帯広告からの引用)
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★☆
○ショートショート。懐かしいですね。
私たちが中学生くらいの頃(年バレ)、星新一とか流行ってましたよね。大抵みんな読んでいたのじゃなかろうかってくらい。。でも、学生の頃にこんなの幼稚だとかって思って(だと思う)、古本屋に売ったりしちゃったのでしょう。いま私の手許には一冊も残っていません。残念。ま、でも人はそうやって皮膚を一枚一枚脱ぎながら、変わっていくのでしょう。
○で、瀧謙一郎だ。『神様からのEメール』。ウム。これはなかなかユニークな本である。
どこがユニークかというと、それは基本的には著者が持つ個性の大きさ、おおらかさがもたらすものかも知れない。
このショートショートで扱っているテーマは、例えばキーワードで列挙すると、@クローン生物や遺伝子組み換え、養殖などの食糧問題。Aスパムメールやハッカーに悩まされる高度IT化社会の諸問題とPCとのつきあい方。B老人介護やヘルパー、ペットやDVなどに象徴化される家庭問題・人間関係の諸問題。C株取引や貿易、グローバル化が進む中の国際問題・地球問題等々ということになる。
しかしこのように広範かつ極めて今日的なテーマを採り上げていながら、不思議となつかしい。
その味わいがユニークなのである。
○ネタばれぎりぎりで解説すると、例えば表題作の「神様からのEメール」では、人類の様子が心配になった神様が人類に向けてEメールを送ったら、<スパムメール>と勘違いされてその想いが伝わらなかった、といったエピソードにも見られるように、ショートショートに必要と言われるある程度の“ブラック”な部分というものも、もちろん用意されている。また最後の最後にころっと引っ繰り返されて、「なる(ほど)、その手できたか!」と唸らせられるショートショートならではの醍醐味というのも充二分に味わえる。だけどそれだけじゃない。
○PCが生活に入り込んできて戸惑う私たちのその戸惑いを実感をこめて作品化した「記憶の保存」や「金縛り」なども、着想の面白さだけでなく、思わず笑える仕掛けになっていて、その語り口にとても好感が持てる。「アルマゲドン」の中の<ゴッドワールド>などは、そのまんまパクッて商売になるのでは? ってgoodアイディアだし、「特別なネタ」の最後の一言は、まさに必見。これが言いたかったのね、って次第で読者との阿吽の呼吸をよくわかってらっしゃるって感じ。「悪夢」の中の主人公<黒木>は、本当はどちらの側にいるのだろう? とふと考え込む時、それは私自身の問題だったりして、非常にコワイ。云々。。。。
○あまり詳しく述べてしまうと未読の方に申し訳ないので、このあたりにいたしますが、まず、このなつかしさの多くは、<ショートショート>というスタイルに起因するものと思われますが、が、しかしそれだけではない。基本的に「瀧謙一郎」という作家が持つその精神の自由さ大きさが、時代を超えて人に伝わる何かを予感させるからだろうと思います。
どの作品にも共通するのは、様々な問題に振り回され右往左往するこの愚かなわれわれ人類、人間に向けられた透明な観察眼と鋭い洞察力。そしてその鋭さにも拘わらず、ベースに通低するのは作者の持つその眼差しのあたたかさ、やさしさといったものです。この眼差しを通して見る≪作品世界のいいようもない安心感≫が、この作品集を独特の高みにまで持ち上げたと言えるでしょう。
久々にこころ洗われる佳作といっても過言ではありません。騙されたと思って是非ご一読を!
○さてこの「瀧謙一郎」氏ですが、私自身は面識も何もありません。
そもそも私がこの方を知ったのも、本年思わぬ病に斃れ他界された後、その「追悼記」を載せた私の後輩のあるメルマガ(『世界遺産』をテーマとした)を読んで初めて知ったわけだから、無理もないのですが、とても残念なことです。お会いできなかったことも。もちろん、逝去されたことも。ご冥福を!
その後輩の「追悼記」がまた感動的だったことも付記しておきます。
*上記後輩の「追悼記」にご興味がおありの方は、こちら。
第三回 2004年10月16日(土) *2004年10月3日(日)の<Stream Diary>より一部加筆転載。
『さつまくん』 第五巻 大黒屋仁兵衛著
非売品 シリーズ第五作目。
爺「さつまくん」と孫のトモくんのかけあいで、繰り広げられるテンポのよい4コマ漫画。
創作意図について、創刊号の作者の言葉を引用いたしますと、このようなことになります。
(以下引用)
爺「さつまくん」は、昭和八年生まれ鹿児島県出身です。
薩摩は、江戸末期まで島津藩統治。幕末以降西郷隆盛、
大久保利通、東郷元帥など、数多くの日本を支えていく
人物を輩出しています。十八歳までこの薩摩風土で育ち、
第二次大戦中は小・中学生。そして関西へ出てきました。
家族は、女房を亡くし、実娘夫婦と四歳の孫智君と同居し
ています。性格はおおらかで、人生いつも前向きに
楽しんでいます。特に助平爺さんでもあり、もてるようで
もてません。そんな人物ですが、応援していただければ
幸いです。
(引用終わり)
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★☆☆
○今号は、『アテネ特集』。熱戦を繰り広げた熱い闘いとその様子に一喜一憂した私たち日本人のあの暑い日々とその興奮を、ユーモアまじりにご紹介されています。体操男子団体の28年ぶりの「金」に刺激されて、○玉を清める「爺」。北島の活躍に思わず褌まで、日の丸に染めてしまった「爺」。女子レスリングの押さえ込みに妄想膨らませる「爺」などなど。お馴染み「爺」と「トモくん」のほのぼのとした掛け合いが、忘れかけられているふるさとの良さ、人々のふれあい、といったものを思い出させます。
○「さつまくん」で特筆すべきは、この“年寄りと幼いこども”とのコミュニケーションの面白さであり、その眼差しの暖かさである。また、年齢のギャップによるやりとりのチグハグさや、生活シーンにおける決定的な差異のおかしさが、マンガとしてのベースになっているわけですが、その避け難く大きく口を開く互いの相違をも乗り越える<ひととひととが接することで現出せしめる、もうひとつの人間同士の交歓の重要な意義性>なのである。
○さらに言い募ると、これを読み某かを思ったり考えたりする≪読者≫という存在と≪作者の想い≫との接触が、また新たな化学反応を引き起こしていくその態様が、また実にユニークなのである。
○もうじき還暦を迎えられる作者と主人公「爺」(昭和8年生まれ)には、それでも10年以上の開きがあり、作者としてもある程度は想像力の産物として「爺」を描いているわけですが、この「爺」に対する共感が当該年齢のファンからは当然沸き起こり、またまったく年の離れた小学生の姉妹から、この作品に触発されての4コマ漫画の投稿がなされたり、と。
元々交遊範囲の広い作者にして、「本当にマンガを描いて、よかった」と言わしめるほどのものらしい。「兵庫県知事にも礼を言われた」とのこと。ひととひととの出会いは、やはり発見なのですね。
*尚、当面「さつまくん」ご希望の方は、当サイトの<メール>にて、ご連絡いただければ、作者にお伝えするようにいたします。 もう少し見たい方はこちら
第二回 2004年10月11日(月)
『タユランの糸車』 中島直伽著
出版社名:郁朋社 出版年月:2002年9月 SBNコード:4-87302-171-5
税込価格:1,260円 頁数・縦サイズ:233P 19cm
■商品の内容
[要旨]
いま、生きている証が欲しいから…夜の街に立つ娼婦タユランは自由な人生と真実の愛を追い続ける。気鋭の新人女流作家書下ろし純文学作品。
(以上「e−hon」より引用)
★松直伽の小説★
「タユランの糸車」(郁朋社)<ストーリー>ガランジャからやってきたタユランは、ジャポンで店を持つ夢を持ち街娼に身を転じる。様々な男性と知り合うが、ある日、ヨウジロウという客と出会い運命が変わる。困難に直面しながら、異国の地で自立していく異邦人女性を描く。
立ち読みする→http://www.matsunaoka.net/novel/tayuran-01.html
(以上ご本人の紹介ページから引用)
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★☆
○とっても不思議な読後感の残る小説である。
近年避けて通ることのできない問題として、在日外国人の受け入れ問題がある。その問題に作者なりにメスを入れ、一定の問題提起をされていると思うのだけれど、決してそれは声高ではない。人が生き、いろんな人間と出会い、やがて誰かと愛し合って、子を設ける。そんな流れるような普通の人生について、日本人だから、ガランジャ人だからといった違いは何もない。愛し合っていても、常にそれを疑い、またそれを信じる。でも、それは決して何かを期待してのものではなく、なるようになる。あるいはなるようにしかならない。という達観した境地のあるべき姿として、淡々と描かれる。
それはごくごくありふれた光景として、しめやかに密やかにまるで<生>のように紡がれていく。
○全体に「小説」でありながら、いにしえの言い伝えや、「朗読詩」を読むような心地よいリズムを刻みながら、この物語は展開される。そのストーリーは、決して意外なものでも突飛なものでもないにも拘わらず、読む者のこころを惹きつけてやまない。それは、おそらく作者が<タユラン>を通じて示す“人間たちへの愛”に満ち溢れているからではないだろうか? 生きることの意味や、テクニックにいつまでも慣れることなく、他人に対しても決して正直でも誠実でもない。それに加えて強くもない多くの<人間>という者への、限りなくやさしい目線がそこに感じられる。
夢のような、現のようなそんな不思議な語り口に揺すられながら、心地よい眠りに就いていく。そんなやさしい気持ちになれる小説である。
○作者と私は面識はありません。
ただ古い友人の配偶者でいらっしゃる、というだけなのですが、この本が出版され、お付き合い気分で読ませていただいた私は、正直意外な感動を持て余したことを思い出します。こういう出会いも貴重なもの。是非この機会にどうぞ。
第一回 2004年9月18日(土)
『サムライ、ITに遭う 幕末通信事始』 中野 明著 (定価)1,890円
「ケイタイ依存の現代社会も、その発端はペリーの土産の電信機にあった。
日本の電気通信150年のなぞがこの本で解けた。」―荒俣 宏氏推薦!
「IT革命」と言われるように、現代社会では情報のあり方、使い方、生活の仕方に大きな変化が起きている。だが、その中心にあるインターネットにさえ、いまだ150年前の「電気通信」の技術が使われている。▼1854年、ペリーが二度目に来日した際、おみやげとして「電信機」をもってきたのが日本最初の電気通信と言われている。ペリーは横浜でデモンストレーションを行い、新しい科学技術の威力を日本人に見せつけた。▼ところが一説によると佐久間象山は、ペリー来航の5年も前に「電信機」実験を行っていたという。その真偽や如何に?▼丹念な調査に基づいて当時の電線の架設方法など、ちょっとマニアックなトリビアも交え、ドキュメンタリータッチで描く幕末通信事情。幕末ファンから黎明期の通信技術に関心のある人まで楽しめる1冊です。
〜目 次〜
プロローグ サムライ、バテレンの技術に驚愕す
第一章 佐久間象山、横浜でペリーと相見える
第二章 長崎の町医者、本邦初の電信手となる
第三章 メリケン人、横浜に電信柱を立てる
第四章 バテレンの妖術、その謎を解明す
第五章 ペリーの電信機、竹橋御蔵で朽ちる
エピローグ 平成の通信、電気を光になす
●以上は、「NTT出版一般書籍新刊案内」サイトからの引用です。
当然、「楽天ブックス」http://books.rakuten.co.jp/RBOOKS/NS/CSfLastGenGoodsPage_001.jsp?GOODS_NO=1704491&rbx=X
などでも購入できますので、よろしければご参照ください。
【ふるりんチェック】 オススメ度:★★★★☆
○もう何年も前から、IT革命の前兆をいち早く察知し、イベント企画なんかやってられない!と
<PCテクのプロ>、<情報通信ネットワークのフリープランナー>として活躍されてきた「中野氏」の集大成がここにある!という感じを受けました。
今でこそ、「パワーポイント」で企画書をつくる(あまり表現うまくないけど)というオッサンは数多いますが、中野さんの立ち上がりはホント早かった。PC企画書のノウハウ本を何冊も上梓されたと思ったら、「次は通信だよ」とばかりに、大手電機会社と自治体の電子ネットワーク構築の業務に携わられ、だんだん彼が遠くに行ってしまうようで、随分寂しい時期もありました。でも時代が彼に追いついたというのでしょうか、ここ数年は広告代理店とも改めてお付き合いのできる余地・可能性が出てきて、喜んでいます。
で、またまたお付き合いが始まったわけですが、喜んでお互いお酒ばかり呑んでいたりするわけで、仕事の方はさっぱり、というのも問題ですね。(これは私の問題か! ( ̄ω ̄;) )
○さて中身ですが、ペリーが献上した電信機について、それが果たして本邦初だったのかどうか、またこの「電信機」という珍妙な機械に対するサムライたちの反応はどうだったのか、などなどの謎と疑問を、大量のデータや資料をやっつけながら、次々と解き明かしていくその手腕は、さすがと唸らせられます。
実は執筆中に彼からその話を熱い語りで先行して入手していた私には、あらかたこういう話だったという与件があったにもかかわらず、その面白さに引き込まれ、一気に読ませていただきました。
○“通信事始”という点では、前作『腕木通信』(朝日新聞社)からの発展形というか、副産物という側面があるわけですが、ペリー来航150周年というこのタイミングに、また通信各社が固定電話料金を下げ、顧客囲い込み競争に必死となっているこの時期に、こうした本が世に出ること自体の意義はとても深い。
共通のファンである吉村昭氏の佳作『落日の宴』の主人公となった勘定奉行・川路聖謨が、ペリーの電信デモンストレーションよりも一月ほど早く長崎出島で電信機を体験していたエピソードなどは、川路への愛と尊敬が垣間見えて実に微笑ましかった。
「ガラス製碍子」の写真には、モノクロ写真ながら、その美しさに一瞬息をのみました。
著者ご推薦の著名オークションサイト「イーベイ(http://www.ebay.com/)」にあなたもアクセスして、「insulator」をキーワードに碍子を検索してみるのも一興。
★補記:このページをアップした翌日:2004年9月19日(日)付け 日本経済新聞の書評欄「あとがきのあと」に著者写真入りで大きく紹介されていました。おめでとうございます!

★2004年10月4日(月)付け『電通報』より

★2004年11月3日号 『ダ・カーポ』548より
