全自動シリーズ
科学万能時代・・来るべき次世紀はこう呼ばれる事になる。
それは一人の天才科学者がもたらしたものだった。
これはその天才科学者が若き日に知った恋の物語である・・・。
「全自動シリーズ3」全自動おかん VS 全自動伏せ字(後編)
カンカンカン。キュイ〜〜〜〜ン。トンテンカン。
ここは研究所内の第2級シークレットエリア、全自動人形製作課である。
キュルルルル。チュンチュイン。ガガガガガガガ。
いまここで新たな全自動人形が制作されている。
ドドドドドド。パンパンパンギャンギャン。カポッカポッカポッ。
全自動人形の外殻部自体の制作は実は大して難しくない。要となるのはAI(人工頭脳)だからである。
今その外殻部のトンカンテン。実装がゴンゴンゴン行わダダダダダダれてビビビ・・うるさあああい!!!
で、製作課デスク。スタッフの二ノ宮と九里浜博士が休憩している。
「どうですか、私が製作したAIの出来は。エレガントに舞い、ビューティホーに駆ける、まさにベストオブ
ベストの全自動優美の出来上がりですな!」
「完成して見ない事には何とも言えんの。大丈夫なのか、二ノ宮君。経験も無しに実戦投入じゃから・・敵は
手強いぞ。」
「敵・・敵とおっしゃるんですね、ご自分の息子を。クックックッ・・心配御無用、遠慮なく叩き潰してさし
あげますよ。それに経験不足とおっしゃいますが、今までのシリーズの蓄積があります。我が八百万グループ
がバックアップするこのプロジェクト、フフ・・たった一人の小僧に何が出来ますか。見せて差し上げますよ、
新しい時代の息吹を。」
「(・・しかしこのような道化を送り込んだグループの意思が読めぬな。あの若会長は何を考えている?)
・・まあ頑張ってな。私は出張があって外出する。しばらく戻らんでな。」
「おや、ご自分の息子が負けるシーンを見ないのですか?」
「・・あとでレポートを出してくれ。」
そう言い捨てて博士は出ていった。
「ハッハッハッ・・・!」
二ノ宮の高笑いが辺りにこだましていた。
場所は変わって制作場のタラップ。右四間と三度笠が出来上がっていく全自動優美を眺めながら話していた。
「楽しみだねっ、ふーちゃん。う〜ん、あの人形意外と格好良いじゃんっ!」
「どういうつもりですか。」
「んーっ? 何がぁ?」
「私をここに釘付けにしている理由です。自分でも風太郎さんのところに行かずに研究所内に待機ですね。
風太郎さんの人形を襲うのは内緒ですか。」
「もっちろんっ! そんな事すればお兄ちゃんは人形を封印しちゃうでしょーっ? これは会長の命令
なんだからねっ。仕方がない仕方がないっ。」
「そうですか。」
「そうでーーすっ! おんや〜もしかして気になるかなぁ? 愛しの風太郎さん、貴方の研究が邪魔されようと
していますぅ、って。あ〜貴方の元へ飛んでいきたいーって。」
「三度笠さん、何度も言いますが私は風太郎さんの事は
「でもふーちゃんが下の名前を呼ぶのはお兄ちゃんだけなんだよぉ。風太郎すわあんてっ。」
「以前風太郎さんに命令されましたから。」
「命令ってぇ・・?」
「『あ、あの・・僕の事は久里浜さんではなくて・・その・・風太郎、って呼んでく、下さい・・!!』
と以前風太郎さんがこの研究所にいた時に。」
「(ガクッ)・・ハァ・・なあんか調子狂うなぁ・・。」
手すりに肘掛けながら三度笠は呟くのであった。右四間はただ人形が出来るのをジッと見ていた。
そこから右四間の思いは窺い知る事は出来なかった。
そして数日後、事件は特百地商会で起こった。
カチャカチャカチャ・・。手際良くパソコンを叩く風太郎。
「う〜ん、この程度じゃ探索能力には限界があるなあ。やっぱり言語機能をもう少し強力に・・。」
「おーい! おーいコラ風太郎ッ!!」
「いやでもそうするとこのハードじゃなあ・・。会長に頼んでもっといいものを用意してもらおう。」
「風太郎ーーーー!!!!!」
「早速新しいプログラムを(ボカッ!!!!!)
「ハァハァハァ・・呼んでんじゃねえかさっきからッ!!! 全く、集中すると全然周りが聞こえないんだな
こいつは!!!」
「い、痛いですよ・・! あ、会長さん。実はお願いがありまして・・。」
「あアン? 後だ後。それよりオメエにお客さんだよ。」
「お客さん?」
「変な服着た若造と三度笠と・・凄え美人。」
「? はあ・・・。」
「右四間さん!!」
「・・こんにちは、風太郎さん。」
「僕もいるよーーーっ!!」
「三度笠さんも。こんにちは、今日は一体・・。」
「『も』って何!『も』って!! 失礼しちゃうなぁ。ま、いいや、今日はボクただの付き添いだしっ。」
「そう、今日の主役はこの私、二ノ宮天岳だッ!!!!」
ババアアアアアン!!!!!!! どこからともなく効果音が聞こえてきた。
「あ、こんにちは。僕は九里浜風太郎と言います。」
「あ、どうも。ってそうじゃなーーーーーーーーいッ!!!!!!!! これかッ! この強かさで芙蓉さんを
誑し込んだのかッ!!」
「は、はあ・・?」
「聞けッ、九里浜風太郎! 貴様に芙蓉さんに言い寄る資格はナッスィング!! 我が正義の鉄槌で貴様を
地獄に送り込んでくれるわッ!・・と言いたいところだが貴様にチャンスをやろう。私の全自動人形と戦え!」
「あ、あの話が見えないんですが・・戦えって・・。」
「戦っちゃえっ、お兄ちゃん。」
「ほう、そこの変な人形とうちの全自動おかんが戦うっていうのか。何か面白そうだな。」
裏から特百地会長も出てきて話に絡んできた。
「え、全自動おかん・・駄目ですよ会長!! 話をややこしくしないで下さい!」
「何で戦うんだ? 料理か? プロレスか?」
「う〜ん、僕はやっぱりパンチとかミサイルとか飛ばして欲しいなーっ。」
「お、真琴。それも面白そうだな。それとかマラソンはどうだ? そこの美人の姉ちゃんはどうだ?」
「僕の話を聞いて下さいーーーーーーー!!!!!!!!」
皆一往にピタッと静まった。
「・・何のつもりか判りませんが僕はそんな下らない事のために全自動人形を使用する訳にはいきません。
帰って下さい。」
「風太郎さん。」
「え、右四間さん。」
「戦って下さい。」
「え・・?」
「戦って下さい。貴方の道はそうする事でしか開けないと思います。」
「ですが僕は・・ハッ。」
風太郎は息を呑んだ。右四間の目が風太郎に何か大事なものを訴えかけている事が判ったからだ。
好きな人だから・・信じられる。そう、右四間さんを信じよう。それは僕の決意、右四間さんの願い。
「・・戦います。」
かくて風太郎の闘いは始まった。
(つづく)