Dear friends
「こんにちは」
「あ、部長」
しー、と指を口に当てるサラ。その仕草だけで状況を理解した晶が視線を奥へと向けると、案の定テーブルに突っ伏すような姿勢で眠りに落ちている八雲がいた。
所は茶道部の部室、開けた窓からは穏やかな春の風が吹いてカーテンを揺らしている。
「またお昼寝?」
「はい、ついさっきまでは起きてたんですけど」
そう言って苦笑めいたものを浮かべるサラ。
「でもこうしてる時の八雲の顔、いいなあ、って思うんです」
今度は柔らかく微笑む。
「どう言えばいいんでしょう……カドが取れてる、と言うか……」
険のない?、という晶の言葉にそれです、と頷く。
「八雲ってキレイだけど余所行きの雰囲気がどこかあるんですよね。でもそれがこうしてると」
見ているこっちが優しい気持ちになれますから、と結ぶサラ。
「そうかもしれないね……」
答える晶の表情にも穏やかな笑み。もっとも、こちらは慣れないと見分けられないものだったりもするのだが。
「最近は私の前でもこういう顔、見せてくれるようになってきたんですよ」
「それは塚本さんがあなたの事を友達だと思っている証拠だよ」
そうだったら嬉しいです、と今度は照れたような表情。
「それに私以外の人の前でも。やっぱりあれがきっかけなのかな」
「……播磨君?」
あれ、という言葉に晶が連想したのはとあるクラスメイトの姿だった。そうです、と答えてから言葉を続けるサラ。
「八雲は下心……とまでは言わないですけど、そういうのに敏感だから。それが播磨さんはストレート――じゃないかな、そう、素直に接してくれる人ですから」
だから安心できるのかな、と思案顔をしてから、一転して今度は声をひそめて。
「……部長はどう思います?」
「どうだろう。やっぱり塚本さんに訊かないと分からないよ、それは」
そう答えた後で付け加える晶。
「でも播磨君、基本的にいい人だから大丈夫だよ。どうなっても」
「どうなっても、はないですよ」
それが高野晶流の冗談と分かっていても、一応抗議するサラ。
「塚本さんはどうだか分からないけど、恋をすると変わるのは本当だよ」
さらりと受け流してそんな事を言う晶。
「そうなんですか?」
「うん、そう」
私にはまだよく分からないです、そう言った後でなんとなく尋ねてみる。
「高野先輩の経験談?」
「さあ、どうだろう」
あえて部長、と呼ばずに訊いてみたその問も、あなたにも分かる時が来るよ、とやはりさらりと受け流す晶。
「ふふ……」
その様子がなんとも晶らしくて思わず笑みがこぼれるサラ。
と。
「――――ん」
「あ、おはよう、八雲」
目をしばたたかせて身を起こす八雲。つい先ほどまでその頭上で交わされていた会話の内容は、もちろん知るよしもない。
「お茶入れようか」
「え……あ……うん」
どこかまだ寝ぼけ眼の八雲に、ちょっと待っててね、と紅茶を入れに立つサラ。
その様子を微笑みつつ見つめる晶。
うららかな春の午後、茶道部の部室には穏やかな時間が流れる。