the Beautiful World




- The world is not beautiful. Therefore, it is. -


「あれ……?」
「……」
「あ!やっぱりそうだ。久しぶりだね、どうしてこんなところにいるの?」
「あなた――私と話してるつもり?」
「へ……?だって他に誰も……」
「……そう。ならいいわ――久しぶりね」
「うん、そうだね。でもよかった、人違いじゃなくて」
「……声をかける前に確認するんじゃない?普通」
「でもそうだったんだから問題なしだよね」
「相変わらずね、本当に……」
「ただいまー」
「おかえり、姉さん」
 今日は遅かったね、と言いながら台所に向かう八雲。
「ごめんね、久しぶりに会った子とおしゃべりしてたらこんな時間になっちゃった」
 でも面白かったよ、と笑う天満に、よかったね、と微笑む八雲。
「どんな話してたの?」
「いろいろだよ。んっとね……」
「――ねえ、生きてるのって楽しい?」
「うん、楽しいよ」
「……即答ね」
「でもそう思うよ、私」
「本当に?」
「うーん、そうじゃないことだってもちろんあるし、私一人だったら嫌に
なっちゃうかもしれないけどね。でもいろんな人がいてくれるから、近くに」
「……」
「友達とか家族とか、みんながいてくれるから
やっぱり楽しい、って思うんだけど……違うかな」
「そう……」
「私はそう思うんだけど……あなたはどう?楽しい?」
「……私は」
「……ずいぶん難しい話したんだね」
「私もちょっと困っちゃったけど……でも、やっぱり楽しいと思うよね、八雲も」
「うん……でもその人って少し……」
「変わってる、かな。でもとってもいい子だよ」
 まだ小さいのにしっかりしてるしね、と笑う天満。
「え……?そんなに小さな子と……」
 少なくとも、天満の話を聞いている限りはとてもそうとは思えず、訝しげに
聞き返す八雲。
「それがね、見た目よりずっと年上なんだって」
「――姉さん」
 もしかして、と八雲が言葉を続けようとしたその瞬間。
「久しぶりね、ヤクモ」
 ふわりと舞うように、何もない空間から彼女は現れた。
「分からないわ……」
「え?でも……」
「あなたが持っているようなもの、私は持っていないもの」
「……ごめん、変なこと訊いちゃったね」
「いいわ、私は別に……」
「ね、じゃあさ、友達になろっか、私と」
「え……?」
「私一人じゃダメかもしれないけど、私の友達だっているし、
八雲――あ、妹だよ、私の――もいるし……きっと楽しいって思えるよ」
「……本当に変わってるわね、あなた」
「うん、よく言われる」
「そういうところが変わってるのよ……」
「……やっぱり」
「あれ?八雲のこと知ってるの?」
「前にちょっと、ね……」
 そう言ってから、八雲の方に向き直る少女。
「あなたが他人を信じる理由が分かった気がするわ」
「え……?」
「無条件の信頼、それに――そう、これが愛情なのね。確かにそんなものが
 身近にあれば、誰かを嫌いになんてなれるわけがないわね」
「私は……」
「え?え?どういうこと?」
 会話の内容についていけず戸惑う天満を、あなたは分からないままの方が
いいのよ、と軽く一蹴。
「……それだけよ」
 じゃあまたね、と少女は瞳を――
「……そう、後一つだけ言っておくことがあったわね」
 ――閉じようとして、その前に何かを思い出したように呟く。
「それじゃ後一つだけ訊かせて」
「いいよ、何?」
「あなたは『友達』のことが――好き?」
「うん、みんな大好きだよ」
「そう――それじゃ」
「……悪くはないわね」
 『友達』というのも、と。
 少しだけ――ほんの少しだけ恥ずかしそうに、小さく笑って――

「――ありがとう」

世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい